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中電 原発の行方 福島事故から3年 <上> 安全審査 宍道断層の評価

 2月下旬、島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の近くにある宍道断層(延長約22キロ)について中国電力の担当者が説明を終えた後だった。「データを拡充して詳細な説明を」「調査すべき地点がほかにあるかもしれない」―。原子力規制委員会側から相次ぎ指摘が飛んだ。

当初の想定一変

 昨年12月、2号機の再稼働の前提となる新規制基準の適合審査を申請した中電。24項目の審査の論点を示された審査当初は「想定していた内容」(幹部)とみていた。清水希茂副社長も「余裕を持った防波壁など、相当レベルの高い対策をしている。審査に耐えられる」と強調した。だが今、中電内部には「今後はもっと厳しい指摘があるのでは」と身構える声も漏れる。

 原発の耐震設計そのものにも影響する宍道断層の評価。過去、「活断層はない」とした中電や国の評価が二転三転して現在の22キロに見直された経緯もあり、規制委の質問が集中したのは、断層の長さを決めるデータの妥当性だった。

 「審査は原子力の安全神話を本当に突き崩せるかどうかの試金石だ」と指摘するのは東洋大社会学部の渡辺満久教授(変動地形学)。島根原発周辺の採掘調査で活断層を掘り当て、評価を覆した広島大の中田高名誉教授と調査研究に当たった経験から強調する。

 安倍晋三首相が「世界で最も厳しい水準の安全規制」とする規制委の審査。ただ、断層の評価は意見が割れるケースが相次ぐ。手探りで「安全」を定義する審査の象徴ともいえる。渡辺教授は「中電は新たな採掘調査をすべきだ。福島の事故を教訓とするなら、審査する側も事業者も、危険性を過小評価してはならない」と審査で新たな調査が進むよう訴える。

 規制委の田中俊一委員長は「(事故があった福島第1原発と同じ)沸騰水型(BWR)は、いまは議論の外に置いていい」とし、同型の島根原発2号機の審査は時間がかかる見通しだ。

「課題は山積み」

 今後、厳格な審査が行われたとしても、それが必ずしも住民の安全を担保するものではない。例えば原子力防災計画の在り方は、規制委の議論の対象外だ。安来市自治会代表者連合会の石橋富二雄会長(66)は「仮に安全審査を通っても避難の課題は山積みだ。必ず大渋滞が起きるだろうし、そもそも安全な避難など可能なのか」と指摘する。

 安倍政権が2月にまとめたエネルギー基本計画案は「原発はベースロード電源」と定義し、再稼働を推進する姿勢を鮮明にする。規制委の審査をもって安全議論が終わるなら、事故時の対応などに課題と不安を抱える地域が置き去りになる。(山本洋子、山本和明)

(2014年3月12日朝刊掲載)

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