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「広島原爆写真」は誤報 実は関東大震災 米研究者が「未公開」と著書などで発表

■編集委員 西本雅実

 米カリフォルニア大の歴史研究者が「未公開の広島原爆の写真だ」と著書やインターネットで公開した写真が、関東大震災のものであることが広島市の原爆資料館などの調べで分かった。米メディアが問題の写真をサイトで次々と紹介し、フランスを代表するルモンド紙も信じた結果、13日付で訂正を出すなど、広島原爆をめぐる誤報が国際的に広がっている。

 研究者は同大のショーン・マロイ准教授。1945年の原爆使用を決定した米国指導者らに焦点を当て発刊した「アトミック・トラジディ(核の悲劇)」で、おびただしい遺体などを収めた3枚の写真を、「身元不詳の日本人カメラマンが直後に撮った未現像のフィルムを進駐した米軍兵士が広島郊外のほら穴で見つけた」と紹介して載せた。

 さらに自らのサイトで、母校のスタンフォード大フーバー研究所が「2008年まで公開しないとの条件で元兵士から寄贈を受けた」などの説明を添え、著書掲載を含む10枚の写真を登載した。

 写真の存在をウェブで7日に知った資料館や中国新聞は、写っている救援の人々の姿が戦時下の服装ではない▽背景の建物は広島ではないと、問い合わせに回答。1923(大正12)年の関東大震災の写真とみて関係団体に照会し、10枚のうち6枚が大震災を収めた当時の写真集にあることを確かめた。他の写真も同じような光景から関東大震災を撮った可能性が高い。

 しかし、米ネット・メディアが一連の写真を「未公開の広島原爆の写真が見つかった」と次々と報じ、ルモンド紙やイタリアのテレビ局など欧州メディアもマロイ氏の説明を信じて報じていた。

 資料館などの指摘に対してマロイ氏は13日、「広島原爆だとしたのはフーバー研究所の所蔵記録に基づくが、正しいかどうかを調べなかったことを悔やむ」とメールで回答してきた。自らのサイトからは10枚すべてを削除している。

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