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3.11とヒロシマ

『フクシマとヒロシマ』 第4部 ヒバクシャを診る <3> 検査態勢

■記者 衣川圭、下久保聖司

一般住民向け 整備急務

 放射線量が高い福島県飯舘村、浪江町、川俣町山木屋地区の計122人に対する内部被曝(ひばく)の先行検査。24日、県庁であった県民健康管理調査検討委員会で放射線医学総合研究所(千葉市)は「全員、内部被曝量は1ミリシーベルト未満だった」と報告した。

 検査に使ったのは、ホールボディーカウンター(全身測定装置、WBC)。呼吸や食べ物などを通じて体内に入った放射性物質の種類や量を調べることができる。福島第1原発事故を受け、県には連日「どうすれば検査が受けられるのか」との問い合わせが相次ぐ。  県によると、県内ですぐ使えるWBCは2台。測定には約20分かかる。立ち入り禁止や避難指示区域の約20万人全員が受けることは、物理的に難しい。

 県立医科大(福島市)にある1台の検査対象は、原発周辺で活動した消防隊員と警察官。「一般住民にも内部被曝は一番の関心事。早く個々人の被曝状況を知らせてあげることが重要だ」。広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の細井義夫教授はそう指摘する。

ノウハウに期待

 既に避難している人たちも内部被曝を懸念している。3人の子どもと今月、福島市から広島市安芸区に避難してきた主婦菅野佐知子さん(38)。縁のなかったこの地を避難先に決めたのは被爆地のノウハウを期待したからだ。しかし引っ越し前の6月中旬、広島県内で唯一、WBCのある広島大病院に検査を依頼したところ断られたという。

 広島大病院は近く原発周辺で支援業務に当たった消防隊員や警察官の内部被曝の検査を開始。「一般の方もいずれは対象にしたい」とする。ただ現場の医師からは「避難者の不安を取り除くためにも早く着手するべきだ」との声も上がる。

 菅野さんの長男(11)と次男(10)は結局、長崎市を訪れ、長崎大病院でWBC検査を受けた。「数値の丁寧な説明を聞き、安心できた」と胸をなで下ろす。

数値の説明必要

 放射性物質の放出が続く中、被曝に対する一般住民の不安は募るばかりだ。その解消に、WBC検査は役立つ。福島県民健康管理調査検討委で、8人の委員の一人、原医研の神谷研二所長は「尿検査をWBCとうまく組み合わせれば、県民の安心につながる」と発言した。そして「内部被曝量は住民に分かりにくい。数値の持つ意味の丁寧な説明が必要だ」と付け加えた。

 地域の誰かの値ではなくて、自分の被曝線量を知りたい―。そんな切実な要求に応えられるか、ヒロシマも問われている。

(2011年7月28日朝刊掲載)

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