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3.11とヒロシマ

『フクシマとヒロシマ』 第7部 復興と現実 <5> 想定外の被害

大胆な法的措置が急務

 すべてが「想定外」の規模になった。東日本大震災に伴う福島第1原発事故。想像を超えたその被害がまた復興の道を阻む。

 ネックの一つは法だ。

 例えば、がれき処理。放射性物質に汚染されたがれきの処分方法は、廃棄物処理法に規定がない。福島県内のがれき438万トンのうち、仮置き場に運ばれたのはまだ約37%。本格的に処理作業が動きだすのは、放射性物質の環境汚染に関する特別措置法が施行される来年1月を待つ。

仮設は2年限度

 例えば、仮設住宅。現在、福島県内で仮設住宅に暮らす人は約3万人いる。しかし住めるのは原則2年が限度だ。現行の災害救助法は、そう定めている。会津若松市の仮設住宅で生活を送る大熊町の菊地マチ子さん(60)はその後、住む場所のあてがない。

 「法律を作ったり改正したりするのは国会のはず。なぜもっと早く対応できないのか」。生活の先が見えない中、政争を繰り返す立法府に憤りは増す。

 膨大な費用も必要になる。福島県は1日、第1次の県復興計画案を策定した。盛り込まれたのは710事業。しかし復興・総合計画課は「それにいくらかかるか見当も付かない」と明かす。

 例えば、雇用の確保。震災後、県内の新規失業者は約4万6千人に上った。原発から南に約20キロの楢葉町にある楢葉南工業団地にあった17社のうち操業を再開できたのは2社だけ。年間約350万人の観光客が訪れていた会津若松市では県外からの修学旅行客が9割減った。補償や税の優遇措置などが欠かせない。

広島の事例念頭

 「福島には過去にとらわれない大胆な法整備がいる」。伊達市議の安藤喜昭さん(59)は訴える。

 念頭にあるのは終戦4年後に制定された広島平和記念都市建設法。全国初の地方自治特別法だ。広島市には国から予算と権限が与えられた。補助金追加や国有地の無償譲与が実現し、平和記念公園(中区)や平和大通り(同)も、この法に基づいてできた。

 11月14日に福島県庁であった復興計画検討委員会。「20年後に誰が使うか分からない施設より優先すべきことがある」との声が上がった。国主導の復興は住民ニーズとギャップがあるとの認識からだった。「地方は国に物申すべきだ」。県市長会長でもある福島市の瀬戸孝則市長はそれを受け、語気を強めた。

 フクシマの再生を今、世界が注目している。従来の枠組みにとらわれず、地域が自律的に復興への道を描ける仕組みも必要だ。迅速に大胆に。そして住民生活を最優先に。(河野揚)=第7部おわり

(2011年12月10日朝刊掲載)

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