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苦難の帰国 自伝に記す 元中国残留孤児の赤崎さん

 元中国残留孤児の赤崎大(ひろし)さん(73)=広島市西区=が、旧満州(中国北東部)から帰国するまでの苦難を記した自伝「満州に輝く星」を発刊した。終戦前後の混乱期に両親と幼い姉妹を亡くした体験などをつづり、「現在の平和が多くの人の犠牲の上に成り立っていることを訴えたい」と話している。

 赤崎さんは1940年に旧満州国の現吉林省琿春市で生まれた。父信之さんは、旅館経営や林業で財をなしたが、召集されて死亡。当時のソ連軍からの逃避行を経てたどり着いた難民収容所で、9歳の姉、4歳の妹が逝った。やがて母親も病死。兄と二人きりの残留孤児となった。

 「すでに地獄と化していた。親が先に死ぬ人、子が先に死ぬ人、そこには順次もない」―。収容所では多くの日本人が寒さと飢え、感染症で極限状態に置かれた。無理がたたり日ごとにやせ衰えていく母の姿、13歳で果たした祖国引き揚げの喜び…。自作の短歌を交えながら、振り回された運命を克明に記している。

 「理不尽に多くの子どもや女性が亡くなった時代。戦場だけにとどまらない苦しみを通じ、平和について考えてほしい」と願う。中学生のころから書きためてきた手記や、兄への聞き取りなどを基に書き上げた。「戦争を知らない若者や子どもたちに読んでほしい」と分かりやすい表現に努めた。四六判、134ページ。広島市内の主要書店で販売している。1296円。赤崎さんTel090(8932)1816。(久保田剛)

(2014年4月21日朝刊掲載)

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