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核軍縮 進展どこまで NPT準備委きょう米で開幕 中東・ウクライナも焦点

 2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けた第3回準備委員会が28日、米ニューヨークの国連本部で開幕する。広島市で11、12日に開かれた「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」の外相会合に続く、ことし前半の非核外交の大きなヤマ場。核兵器のない世界へ目に見えた成果を引き出し、再検討会議の成功へつなげられるか。課題を探り、議論を展望する。(田中美千子)

■保有国の報告

 5年に1度の再検討会議の合間に計3回開かれる準備委の最終回。NPTに加盟する約190カ国が参加する。来年の議題などが主題だが、国際情勢を踏まえ、核軍縮や核不拡散の進み具合も話し合われる。

 注目は、NPTで核兵器の保有を認める米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国による核軍縮の取り組み状況の報告だ。10年の前回の再検討会議が合意した最終文書に、日本の意向を踏まえて明記された。

 5カ国だけに核兵器保有を認めるNPTは「不平等条約」と言われるが、核兵器保有国に核軍縮交渉の「誠実な義務」を課す条約でもある。10年の最終文書は今回の報告を踏まえ、15年の再検討会議で、核軍縮の次のステップを検討するとした。5カ国がどこまで情報を開示するのか、この先の核軍縮の行方を占う。

■非合法化

 核兵器の非人道性は誰もが認める。だから非合法化しようという議論が、10年の再検討会議に前後して国際社会で高まってきた。

 スイスやノルウェー、メキシコが中心となって、12年の第1回準備委以降、核兵器の非人道性に焦点を当てて非合法化や不使用を訴える声明を発表し、賛同国を増やしてきた。13年10月に国連総会で発表された非人道性と不使用の声明には、日本も含む125カ国が名を連ねた。

 これに対し、核兵器保有国は警戒を強めている。核兵器は依然、安全保障戦略の中心だからだ。「核の傘」に頼るオーストラリアや日本など17カ国は同じ国連総会に「廃絶には安全保障面の議論が不可欠」として核抑止力の維持を前提とした別の声明をぶつけ、けん制した。今回の準備委では、「これまでのような声明は出ない」(外務省幹部)との見方もあるが、核兵器に頼る国と、頼らない国の攻防は続きそうだ。

■地域問題

 軍縮の本題以上に、準備委の議論の行方を左右しそうなのが地域問題だ。とりわけ中東問題。NPTの無期限延長を決めた1995年の再検討会議は、事実上の核兵器保有国のイスラエルを念頭に、中東の非核地帯化を目指す「中東決議」を採択。10年の再検討会議の最終文書には、12年に中東問題を話し合う国際会議を開くと明記した。しかしいまだに実現していない。

 イスラエルと対立するアラブ諸国は反発を強めている。エジプトは13年の第2回準備委を途中からボイコットし抗議の意を示した。今回も出方が注視される。

 ウクライナ情勢も新たな焦点だ。ウクライナは旧ソ連崩壊後、領土に残った核兵器を放棄する代わりにロシアなどから安全を保障された。今回、そのロシアがクリミア編入を強行し、「NPT体制の弱体化につながる」との懸念もある。

■被爆国の役割

 広島県の湯崎英彦知事、広島市の松井一実市長も準備委に参加する。被爆地の両トップがそろうのは初めてだ。県は国連本部でパネル討議を主催、松井市長は公式行事で演説し、核兵器廃絶へ取り組みの加速を訴える。

 広島市でのNPDI外相会合で採択した「広島宣言」は、核兵器の非人道性の議論は「すべての国に開かれた普遍的なもの」「国際社会の結束した行動のための触媒」と指摘した。一方、非合法化に触れず被爆者や非政府組織(NGO)に大きな失望が広がった。

 外務省幹部は「法的拘束力を焦点にすれば核兵器保有国はついてこない。非人道性を大事に思いウイングを広げるにはNPDIの考えは参考になるはずだ」という。軍縮へ向けた被爆国の一層のリーダーシップが問われている。

(2014年4月28日朝刊掲載)

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