×

連載・特集

海自呉地方隊60年 第3部 自衛官になる <2> 学生の一日 集団行動 遅れ許されず

 海上自衛隊呉教育隊はJR呉線と堺川、国道487号に囲まれた市街地にある。近くには商業施設もあるが、敷地内には町の騒がしさは伝わってこない。午前6時、ラッパの響きが静寂を破る。総員起こしと呼ばれる起床の時間だ。

 4階建ての隊舎から学生たちが走り出てくる。3分かからず列を整え、点呼が始まる。1、2、3、4、5…。当直が「異常なし」を教官の分隊長に伝える。

独特体操 汗だく

 続いて「海上自衛隊第一体操」で体をほぐす。狭い船の中でも体を動かせるよう工夫した海自独特の体操である。体が温まると筋力トレーニングに移る。顎を地面すれすれまで近づける腕立て伏せ、膝を上げた状態での腹筋。起床から20分足らずで汗だくになる。

 教育隊の生活は慌ただしい。分刻みのスケジュールに遅れは許されない。1人の遅れが集団行動を乱し、非常事態においては致命的な結果を招きかねないからだ。

 常に次の行動に備えて動く。朝はグラウンド行進、続いて午前8時20分から教務が始まる。行進や整列、敬礼といった自衛官の基本を身に付け、筋トレや体育、武道、水泳などで体を鍛え、パソコンの扱い方も学ぶ。午後3時50分まで続く。合間には教官から姿勢や服装、受け答えのチェックが入る。朝夕は掃除もある。三度の食事もせわしない。

週末は若者の顔

 午後8時半~10時の自由時間は、携帯電話の使用が許され、テレビを見てもよい。しかし、多くは洗濯やアイロンに時間を割く。作業服や制服に汚れやしわがないようにするためだ。荷物や履物の置き方、ベッドメークも決まりがある。覚えるまで一苦労だ。ルールが身に付くにつれ、学生は規律正しい自衛官へと成長していく。

 若者の顔に戻るのは週末。制服での外出が認められ、ショッピングセンターや街に出かける。「カラオケにも行く。リラックス」と一般曹候補生の西垣直己さん(25)。英気を養い、次の1週間に備える。(広重久美子)

一日のスケジュール
 午前6時に起床し、午後10時消灯が決まり。教務は1こま50分で7時限ある。体力強化や水泳のほか、点検、短艇(カッター)や銃などの実習なども組み込んである。教務後は水泳や持久走などの補習があり「別課」と呼ばれる。土日は休養日。

(2014年6月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ