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連載・特集

海自呉地方隊60年 第3部 自衛官になる <4> 海への思い 海上防衛・国際貢献 胸に

 ソーレ、ソーレ―。5月下旬、学生が短艇(カッター)をこぎだした。オールは重さ8キロ。フォーム、手つきはまだぎこちない。

民間辞め再志願

 艦上勤務をするためには、短艇や水泳の訓練は不可欠だ。陸海空3自衛隊から「海」を選んだ動機を聞いた。

 「日本は島国で資源を輸入に頼っている。海上輸送路を絶たれたら終わりだから」。一般曹候補生(補生)の馬場良平さん(25)は強く思う。陸自勤務の経験があり、東日本大震災では宮城県石巻市で行方不明者の捜索に当たった。いったん民間企業に就職。不景気のあおりで辞め、再び自衛官を志した。海上防衛の重要性を考えて海自に決めた。

 自衛官候補生の片山雄大さん(20)は「海外任務が増えており、国際貢献ができる」。昨年11月、台風被災地のフィリピンへ呉基地から出港した国際緊急援助隊の活躍が頭にある。

 昨年3月末現在、全国の自衛官は22万4526人。うち海自は4万2007人で18・7%。陸自が13万6573人と圧倒的に多い。

 自衛隊広島地方協力本部呉地域事務所(呉市幸町)によると、同事務所管内の志願者は広島、福山などの他事務所に比べて、海自希望が多い。呉基地が身近な存在であることが大きいという。

父と同じ道選ぶ

 補生の堀川勇人さん(18)の父は海上自衛官。自然と同じ道を選んだ。「艦長経験もあり、かっこいいなと。転居が多かったが苦にならなかった」

 学生はそれぞれ夢や信念を抱き入隊する。部隊経験を経て、海上自衛官としての意識を強固にしていく。

 呉基地を母港とする護衛艦あぶくまの橋本誠さん(33)=3曹=は電測員としてインド洋やソマリア沖での海外任務も経験した。「1人のミスが艦全体に影響する」。海士時代は責任感を強く意識しなかったが、入隊5年目で3曹に昇任し、後輩への指導を通じ、自らの役割を全うするのが大切だと自覚した。

 あぶくまの機関員林大基さん(21)=海士長=は艦上勤務3年目になった。「教育隊でのしんどさを乗り越えたから、今は何とかやれる」と前を見据える。(小島正和、広重久美子)

海上自衛隊の活動
 領海や周辺の警戒監視、弾道ミサイル防衛などのほか、アフリカ東部ソマリア沖での海賊対処活動、被災国への緊急援助隊といった国際活動もある。教育隊の学生は適性検査と希望、人員状況に応じて職種が決まり、各部隊に配属される。射撃、航海・船務、機雷掃海、航空管制など31職種がある。

(2014年6月6日朝刊掲載)

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