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全部保存なら40億円 旧理学部1号館 大地震で倒壊 広島市が発表 象徴化も検討方針

 広島市中区東千田町の広島大本部跡地に残る被爆建物の広島大旧理学部1号館について、市は10日、震度6強以上の大地震で倒壊する危険性が高いとする調査結果を正式発表した。特徴的なE字形の建物の全部保存・活用には40億円の改修費を見込む。市は建物の一部の保存や、モニュメントとしての「象徴保存」も含めて検討するという。

 市議会都市機能向上対策特別委員会で、都市整備局が報告した。昨年12月に壁の12カ所から抜き取ったコンクリート試料の耐震診断で1階の劣化が目立ち、震度6強以上で「倒壊または崩壊する危険性が高い」と結論付けた。

 その上で、計4パターンの概算改修費を示した。全部保存は、耐震補強や内装の改修で40億6千万円。一部保存では、玄関がある正面棟から北東に並んで延びる3棟のうち中央を壊すC字形が33億4千万円▽2棟を壊すL字形が26億円▽正面だけのI字形が18億5千万円―とした。一方、建物自体は取り壊し、外壁や窓など象徴的な一部をモニュメントとして残す象徴保存も候補に挙げたが、形や費用は示さなかった。

 市は「なるべく早く保存・活用策を絞りたい」とし、今後内部で検討を進めるが、決定時期は未定という。

 旧理学部1号館は1931年に広島文理科大の校舎として完成。爆心地から南南東1・4キロに位置し、原爆で外観を残して全焼した。戦後に修復し、91年まで広島大の理学部校舎として使われた。本部の正門から正面に見え、大学の象徴として親しまれてきた。市が2013年4月に国立大学財務・経営センター(千葉市)から敷地0・6ヘクタールととともに無償取得した。

 市に登録されている被爆建物は13年度末で85カ所。11年度以降は毎年1、2カ所が解体されるなどして登録から外れている。(加納亜弥)

(2014年6月11日朝刊掲載)

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