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連載・特集

緑地帯 広島「女縁」の現在 高雄きくえ <4>

 ともにミニコミ紙「月刊家族」をつくった元新聞記者の中村隆子さんはよく「問いのないところに言葉は生まれない」と言っていた。20歳年上だったその友も一昨年旅立った。「自分の言葉で語りなさい、自分の言葉を生みなさい」と根気よく死ぬまで私に言い続けてくれた。「問い」があり、その問いに応答しようとする意志があるところに言葉は生まれる。ようやくその意味が分かった気がする。

 原稿料の出ない「月刊家族」に寄稿していただいた執筆者、取材に応じていただいた人。それぞれの立ち位置で、フェミニズム的好奇心に満ちた「問い」を持ち、誠実に応答しようとした「言葉」がタブロイド判にはあふれていた。介護、子育て、性、暴力…編集者であった私が一番、刺激と恩恵にあずかったのかもしれない。

 本も生まれた。中でも臨床社会学者春日キスヨさんの「介護とジェンダー」(1997年)は、98年、優れた女性問題研究に贈られる山川菊栄賞を受賞。社会学者の上野千鶴子さんから「どうして女ばかりがみとるのか?という誰も答えたことのない問いに踏み込んだ魂に届く研究書」と推薦の言葉が届き、出版社という自覚が湧いたのを思い出す。韓国まで押し掛けて出版した映画監督ビョン・ヨンジュ著「アジアで女性として生きるということ」も思い出深い。

 いま、ひろしま女性学研究所と名を変え、長いスパンで年数点の書籍発行を続けている。「少数であること」にためらわず伝え続けること―。それが「月刊家族」からのメッセージである。(ひろしま女性学研究所代表=広島市)

(2014年6月6日朝刊掲載)

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