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広島大授業で慰安婦映画 電話やネットで批判 学問の自由 懸念の声

 広島大(東広島市)であった従軍慰安婦問題を扱うドキュメンタリー映画を題材にした授業をめぐり、学外から「内容が一方的」との抗議や意見が相次いだ。インターネットでは担当教員への中傷、攻撃もあり、これに対し「学問の自由を脅かす」と懸念の声が上がった。テーマと教材選択の在り方、授業の進め方、教員と学生の関係などさまざまな問題を投げ掛けている。(新本恭子)

 2年生約200人が受講する「演劇と映画」。教員12人がリレー形式で全15回の講義をし、多様な文化を多角的な視点で学び、解釈手法を身に付ける狙いだ。抗議があったのは4月下旬の授業。韓国人の准教授が韓国人監督の「終わらない戦争」(2008年、約60分)を上映した。

 後日、学生が授業への疑問を一部の新聞に投書、記事でも取り上げられた。いずれも慰安婦の強制性が一方的に真実のように伝えられ、何の説明もないのは乱暴と指摘していた。大学などによると、補足説明や質問時間は取っていなかった。

 授業を受けた別の学生は「時間が押していて、授業後に学生同士で議論が起きたり騒ぎになったりすることもなくあっさりと終わった。騒動はしばらく知らなかった」。今も話題になることは少ないという。

 一方、記事掲載をきっかけに大学には電話などが数百件寄せられた。大半が大学に批判的。インターネットには「反日教育。あきれた」「どこの国の国立だ」などのつぶやきや書き込みがあふれた。教員の名前や顔写真を示し、「クビにしろ」と言うものもあった。40代の教員は「同じことが起こりうる」と不安げだ。

「重大な危機」

 同大教職員組合総合科学部支部役員会は今月、学問の自由を守るとの観点で声明を発表。ネットで中傷が繰り返される現状を「学生と教職員の信頼関係の中で自由に意見を出し合える場を奪う極めて憂慮すべき事態」とし、外国籍教員の排除を求める声には「世界に開かれた大学を目指す広島大学にとり重大な危機」と訴える。全国の大学教員らも文書やブログで抗議に反論する見解を示している。

 違った見方もある。60代の教員。「学生が教員の主義主張に反対することは昔からあった。大学紛争の頃の教授のつるし上げを思い出す。ただ今回はネットで爆発的に学外に広がり驚いた。極めて現代的」と指摘する。教員側が萎縮する、との意見には「教員が価値観を前面に押し出せば、逆に学生が萎縮する。反対すれば評価が下がるかも、ととりかねない。教員には政治的禁欲も必要」と話す。

対応策を説明

 大学側は先月末、学内向けの電子掲示板に「見解」を発表。「授業そのものはカリキュラムポリシーに従って適切だった」と結論づけている。一方で、経緯を振り返った上で「授業の進め方で改善を要する点があった」と課題も挙げた。後日の授業で学生に補足説明したほか、授業最終日も質疑応答の時間を設けると対応策を説明。今後も「授業目標が十分に伝わるよう教育の質の保証と向上に努める」と締めくくっている。

(2014年6月15日朝刊掲載)
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