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基地のまちは今 迫る給油機岩国移転 <上> 極東最大級へ 機能強化 運用見えず

低空飛行や騒音 増大警戒

 在日米軍再編に伴い、米海兵隊岩国基地(岩国市)の存在感が増している。7月8日から、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に所属するKC130空中給油機15機が移転を開始。2017年ごろまでには、米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機59機が移る。市民の安全な暮らしは守れるのか。沖縄の負担軽減は実現するのか。変わりゆくまちで、「基地との共存」の行方を探る。

 クレーンが林立する米海兵隊岩国基地。工事車両が吸い込まれるように次々とゲートを入る。総面積約790ヘクタールのうち、約8割で米軍再編に伴う工事が進む。  防衛省によると、本年度の岩国基地の再編関連工事予算は過去最高の902億円。関連予算が付き始めた06年度以降、総額は計3618億円に上る。本年度の発注予定工事の資料をめくると、格納庫や下士官宿舎、家族住宅、医療施設、小学校―など10億円以上の新築工事が目立つ。

 給油機部隊と艦載機部隊の移転を控え、様変わりする基地。現時点の情報を基に計算すると米軍再編後の岩国基地の所属機数は約120機、米軍関係者は1万人以上と現在の約2倍に増える。米空軍で極東最大とされる嘉手納飛行場(沖縄県)の常駐機数を上回る。

 機数が増加すれば、離着陸回数も増える。市と山口県への政府説明では給油機は岩国基地で、普天間飛行場と同様のタッチ・アンド・ゴー(離着陸訓練)を実施する見通しだ。日米間では、海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)とグアムとのローテーションで訓練を分散する協議も進む。

 だが日常生活を脅かしかねない米軍機の訓練場所や飛行ルートの詳細、再編後の戦略的な位置付けは、判で押したように「米軍の運用」とされ、市民にもたらされる情報は十分でない。

 国は昨年11月、空中給油訓練の実施場所を照会した市に「承知していない」と回答。基地監視団体リムピースの調査では、岩国基地に飛来した給油機の行き先は、沖縄のほか、日本海、高知県沖の太平洋、韓国などという。共同代表を務める田村順玄市議(68)は「給油機は複数の米軍機と連動して動くため、より大きな軍事行動につながる可能性がある」と指摘する。

 輸送機能も備える給油機が岩国基地に移転するメリットは何か。所属するFA18ホーネット戦闘攻撃機との密接な訓練や、在韓米軍との行き来がしやすい「地の利」とされる。岩国基地報道部は「より日本の中心に近い位置から能力を提供する」と説明。人道援助や災害支援、不測の事態への即応性が高まるとする。

 一方、岩国基地所属機の訓練の影響を受ける市町は低空飛行や騒音の増大を警戒する。広島県の集計によると低空飛行の目撃件数は10年度以降、4年連続で千件を超え、13年度は1531件だった。より実態を把握するため、北広島町や廿日市市は独自に騒音測定器を設置。山口県の周防大島町議会は今月12日、生活環境への影響を調査する特別委員会を設けた。

 岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の坂本千尋事務局長(61)は「機体の威圧感や不快な騒音で体調不良を訴える人もいる。影響は再編交付金がおりる自治体にとどまらない」と今後の運用を注視する。(野田華奈子)

(2014年6月26日朝刊掲載)

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