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脱原発提案は全9社否決 電力会社の株主総会 中電は再稼働に意欲

 沖縄電力を除く大手電力9社は26日、一斉に株主総会を開いた。全社で脱原発を求める事前の株主提案が出されたが、いずれも否決された。中国電力の総会では、苅田知英社長が島根原発(松江市鹿島町)2号機の再稼働に意欲を示し、「地域の理解を得ながら最大限取り組む」と述べた。

 広島市中区の本社であった中電の総会では、原発に反対する一部の株主が、廃炉を事業として実施することや上関原発計画の白紙撤回を求めた。これに対し取締役会は反対を表明。質問ゼロのまま審議を終え、反対多数で否決された。

 苅田社長は2年連続の赤字の要因を、原発の停止に伴う火力発電の燃料費の増加と説明した。「原発の稼働が見通せない場合、さらなる財務体質の悪化が懸念される」と厳しい経営の背景を報告。株主467人を前に「原子力の安定稼働と徹底したコスト削減に全力で取り組む」と力を込めた。

 原子力規制委員会による適合性審査を受けている島根原発2号機に続き、「3号機も審査申請に向け、準備を進める」と説明した。

 島根原発1号機は3月、運転開始から40年を超えた。経営陣は「現時点で廃炉にする計画はない」「運転延長の申請を検討する」と従来の説明を繰り返した。約2千億円としている島根原発の安全対策工事費は、規制委の審査次第で増える可能性があると説明。また、上関原発(山口県上関町)の建設計画は「より安全な発電所を目指し、建設を進める」とした。

 総会の出席者は昨年より26人増えた。所要時間は3時間6分で12分長かった。  関西電力の総会には、筆頭株主の大阪市から橋下徹市長が出席。「経営陣は失格。自由化に耐えられる会社ではない」と発言し、市が株主提案した脱原発や経営改革を求めた。東京電力の総会では数土文夫会長があいさつに立ち「賠償と福島復興、廃炉、電力安定供給の責任を担える経営基盤を確立するため、従来の経営手法を大胆に転換する」と強調した。

 9社合計で、事前に69議案の株主提案があった。廃炉対策の推進や核燃料サイクルからの撤退を求める提案のほか、原発事故時の住民の安全な避難に電力会社が責任を負うことを求める提案が目立った。

株主提案
 株主が定款変更や取締役選任などの議案を株主総会に提案すること。6カ月以上前から1%以上の議決権を持っている株主が提案できる。株主の利益を最大化するため、経営刷新や増配などを積極的に提案する欧米の投資ファンドなどは「物言う株主」と呼ばれる。電力会社の株主総会では毎年、脱原発や取締役削減などを求める提案が出ている。

中電株主総会 質疑と回答

 中国電力の株主総会であった株主と役員の主なやりとりは次の通り。

 ―原発の経済性は。
 福島第1原発事故の損害額を考慮しても、発電単価は火力など他の発電方法と遜色ない。島根の安全対策費は約2千億円。原子力の代わりに石油火力を稼働させた場合、燃料費は年1400億円増える。マイナス影響が格段に大きい。

 ―国の新たなエネルギー基本計画で原発の新増設は示されていない。独自の判断で上関原発と島根原発3号機の建設を続けるのか。
 基本計画で原子力は重要なベースロード電源とされた。今後、おのずと新増設の位置付けが明確にされる。島根3号機は経済産業相が新増設に含まれないと回答している。

 ―島根原発2号機の審査状況は。
 敷地周辺の活断層評価で指摘を受け、追加調査をしている。8月下旬をめどに調査を終え、早く原子力規制委員会へ報告したい。

 ―核燃料サイクルやプルサーマル発電の考え方は。
 日本原燃が1月、建設中の使用済み核燃料再処理施設の適合性審査を申請した。操業開始に向け着実に進んでいる。高レベル廃棄物の最終処分地選定で国などと連携を強める。プルサーマルは、エネルギー資源の有効活用などの観点から理解を得ながら進めたい。

(2014年6月27日朝刊掲載)

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