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原発責任どこに 地元当惑 「安全とは申し上げない」規制委委員長 島根

 「安全とは申し上げない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長が、川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼働の前提となる審査を事実上合格させた16日に示した見解が、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の地元に波紋を広げている。原発の安全に誰が責任を持ち、稼働の是非は誰が決めるのか。稼働への反対、賛成を問わず、住民は責任の所在を明確にするよう求めている。

 「審査には合格させ、安全は保証しないと言った。驚きだ」。島根原発・エネルギー問題県民連絡会の北川泉共同代表(83)=島根大元学長=は20日、松江市で開いた反原発集会で規制委の姿勢を批判した。続いてルポライター鎌田慧さんも「規制委は安全と言わず、政府も稼働の責任を取ろうとしない」と声を上げた。

 「審査は進めるが、再稼働の判断には関与しない」。昨年7月の審査開始以来、田中委員長は強調してきた。一方、安倍晋三首相は今回の合格後も「審査で安全との結論が出れば再稼働を進める」と、稼働判断を規制委の審査結果に委ねる考えを表明。原発の安全についての責任が曖昧なまま、再稼働が現実味を帯びているのが実情だ。

 「事故が起きた時、責任を取りたくないからだろう」。再稼働を支持する鹿島町古浦自治会の亀城幸平会長(64)はこうみる。「リスクも覚悟で地元は国策に協力している。政府が安全だと言ってくれないとまとまれない」と訴える。

 規制委の審査が進む島根2号機は審査が終われば、立地する島根県、松江市が再稼働を判断する局面が訪れる。島根県の溝口善兵衛知事は川内1、2号機の合格を受け「再稼働への具体的な手続きが不明」と注文した。だが過去には、稼働の是非は「まず政府が必要だと判断すること」とたびたび表明している。政府から、稼働要請を受けるシナリオを描いているのは明らかだ。

 3月に脱原発条例の制定を県議会に否決された同連絡会のメンバーで、島根大法文学部の上園昌武教授(44)=環境経済論=は「本来は県が主体的に脱原発を提起することもできるのに、知事からは国の要請を受け入れる姿勢しかうかがえない」と指摘する。「脱原発の民意は大きい。避難計画の実効性も疑問で、『再稼働ありき』では住民は納得しないはずだ」(樋口浩二)

(2014年7月24日朝刊掲載)

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