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原爆慰霊碑に塗料かけた男性 愚行悔い平和式典参加へ

 広島市中区の原爆慰霊碑に2012年9月、塗料をかけたとして、器物損壊罪で有罪判決を受けた西区の無職男性(37)が8月6日、平和記念式典に事件後初めて訪れる。祖父母たちが被爆者という男は「慰霊碑は被爆者にとって特別な存在。当たり前のことに気づけなかった」と、罪を悔いる日々を送っているという。

 男性は右翼系団体に心酔していたといい、12年9月21日午後2時50分ごろ、慰霊碑の「安らかに眠って下さい 過ちは 繰返しませぬから」と刻まれた面にスプレーで赤の塗料を吹き付けた。広島地裁は判決で「自分の政治的考えを示すための短絡的で身勝手な犯行」と断じた。

 男性は今、アパートで1人暮らし。曽祖父母は被爆死し、祖父母も被爆した。広島で生まれ育ち、幼少期から原爆の恐ろしさを聞かされた。にもかかわらず、団体の「碑文の主語があいまいだ」との考えに感化され、犯行に及んだという。

 うまくいかない就職、話し合える友人がいない寂しさも「愚行」の背景にあったと認める。今春、介護職の資格を取った。「これからは政治活動でなく、市民活動で社会に関わりたい」。式典当日は、原爆慰霊碑や原爆供養塔の前で手を合わせるつもりという。(和多正憲)

(2014年7月25日朝刊掲載)

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