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連載・特集

海自呉地方隊60年 第4部 支える部隊 <3> 呉造修補給所LCAC整備所 水陸両用艇の修理担う

 台風の被害を受けたフィリピンを支援するため、輸送艦おおすみ(8900トン)など海上自衛隊の艦船が呉基地(呉市)を出航したのは昨年11月だった。おおすみは水陸両用ホーバークラフト、エアクッション艇(LCAC)を搭載していた。

 米国製のLCACは日本に6隻しかない。護衛艦隊(神奈川県横須賀市)第1輸送隊第1エアクッション艇隊に属し、呉基地が母港の輸送艦3隻とともに動く。江田島市には海自隊唯一の整備所がある。呉造修補給所の1施設だ。

12メートルのクレーン

 ガスタービンでファンとプロペラを動かし、船体を浮かして進む。呉造修補給所の坂口好明所長(52)=1佐=は「船であり飛行機」と表現するように波の荒い海上を滑るように進む。陸上でも力を発揮する。でこぼこの地面もOKだ。全長約25メートル、幅約14メートル。車両やプレハブ、200人近い人員を運べる。

 整備所は3カ月ごとの点検整備のうち年3回を担う。高さ約12メートルの巨大クレーン「ビッグフット」でつり上げ移動させる。船体は塗装を施していないアルミニウム合金で、傷みやすい。

「いつでも準備」

 昨年のフィリピン派遣の直前には、東京都・伊豆大島の台風被害の救助に出動した。任務を終え整備所に運び込んだ時は船体は傷付いていたが数日で部隊に戻した。坂口所長は「いつでも整備に取りかかれるよう準備している」と強調する。

 そのLCACが脚光を浴びている。昨年12月策定の「防衛計画の大綱」は、離島奪還部隊創設を明記した。沖縄県・尖閣諸島をめぐる緊迫した情勢などが背後にある。元第1輸送隊司令の佐々木俊也さん(59)は離島奪還にはLCACは欠かせないと言う。「LCACは陸自が上陸した後、後方部隊の車両や大量人員の輸送を担う」

 この5月に鹿児島県・奄美群島の無人島で陸自と海自は合同訓練をした。島を外国軍が占領したとの想定で、LCACも参加した。

 2014~18年度の中期防衛力整備計画にも、陸自への水陸両用車52両を配備するとある。さらに7月、小野寺五典防衛相が上陸用装備を搭載できる揚陸用新型艦艇の導入検討を表明した。「新型艦艇はLCACを搭載する」。佐々木さんはそうみている。(広重久美子)

(2014年7月31日朝刊掲載)

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