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連載・特集

海自呉地方隊60年 第4部 支える部隊 <4> 呉警備隊呉港務隊 災害復旧にも迅速対応

 フェリーが行き来する呉中央桟橋(呉市宝町)のすぐ隣に、海上自衛隊呉基地の「Bバース」はある。全長約45メートルの油船はそろり岸を離れ、艦艇給油のため数百メートル先にある係船堀地区に向かった。民間船舶の航行に気を遣い、ゆっくりと進む。

 「港務隊の船が動かない日は、一日たりともない」と海自隊呉地方隊呉警備隊の作田孝之呉港務隊隊長(52)=1尉。給油、艦船の出入港支援、人員輸送。基地の裏方作業を黙々とこなしていく。

6種25隻で対応

 呉港務隊は油船▽タグボート▽弾薬や貨物を運ぶ運貨船▽飲料水を運ぶ水船▽人員輸送の交通船▽廃油を運ぶビルジ船―の6種類25隻を備える。いずれも500トン未満の小型、中型船。隊員約90人は30、40代の海曹クラスが中心だ。

 港務隊は海自の全国5基地にある。中でも呉基地は係留する大型艦艇が39隻と最多で、港務隊の役割も大きくなる。多い日で延べ18隻の出入港を助ける。例えば護衛艦は横に進む能力がない。港務隊のタグボートがロープでえい航したり船体を当てて押したりする。

 これら「内部作業」に加え、もう一つ大きな役割がある。台風や地震など災害時の民生協力。呉地方隊の主任務でもある。小回りの利く港務隊の支援船は沿岸部や離島での活動にうってつけだ。

電力会社と協定

 2006年夏、県営送水トンネル崩落で断水した江田島市に給水船が出動した。呉市総合防災訓練にも長年参加を続ける。作田隊長は「例えば離島のどこから上陸できるか。普段から島の周囲を撮影するなどして、情報収集とシミュレーションに努めている」。

 呉地方総監部は7月9日、中国、関西、四国の3電力会社と災害時の協定を結んだ。陸路が遮断された地域の電源復旧作業に際し、支援船を提供して人員や資機材の輸送に協力する。協定は海自隊では呉が初めてだ。

 東日本大震災だけでなく、近年は各地で大きな災害が続発している。前呉警備隊司令の土肥弘実さん(56)は「人員、物資の輸送面で素早く効率的にできる。規模は小さいが役に立つ」と力を込める。(小島正和)

(2014年8月1日朝刊掲載)

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