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孫振斗氏が死去 被爆者手帳求め勝訴

 被爆者健康手帳の交付を求め、最高裁で勝訴した韓国人被爆者の孫振斗(ソン・ジンドウ)氏が25日、胃がんのため福岡県内の病院で死去した。87歳。告別式は27日、福岡市博多区大博町7の5、みんせい葬祭で。喪主は長男弼模(ピルモ)氏。

 孫氏は大阪市で生まれ、広島市皆実町(現南区)で被爆した。51年に韓国へ強制退去させられ70年、原爆症の治療を受けようと釜山から佐賀県の港に密入国。手帳交付を福岡県に申請したが却下され、処分取り消しを求めて72年に提訴。最高裁は78年、「原爆医療法は国家補償的配慮が制度の根底にあり、不法入国した被爆者にも適用される」と認めた。判決は、在外被爆者への救済の扉を開け、現行の被爆者援護法の制定根拠にもなった。孫さんは在留特別許可を得て福岡市内で暮らしていた。

 一審から支援を続けた平岡敬・元広島市長は「放置された在韓被爆者の苦難を身をもって訴え、植民地支配の責任を日本の市民が見つめる運動の広がりをつくった」と振り返り、孫さんの死を惜しんだ。

(2014年8月26日朝刊掲載)

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