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被爆を語り継ぐ、2014ヒロシマ・ナガサキ(中)=高校生が率先 証言集めネットで発信

 インターネット上に公開された原爆投下時の広島市の地図。図上をクリックすると被爆者の体験談が現れる。「太陽が落ちてきたかと思うほどの強烈な閃光[せんこう]が私たちを襲った」「真っ暗な中でうめき声と同僚の泣き声。私は夢中で天井を破り、はい出た」…。生々しい証言は、それぞれが被爆した場所と連動して示される。

 これは広島市の広島女学院高が制作、公開している「ヒロシマ・アーカイブ」だ。米ネット検索大手グーグル社のグーグルマップを活用。日本語版と英語版があり、同窓会の証言集や新聞記事などから引用した体験談は約200人分に上る。被爆した街並みの写真約150枚は広島平和記念資料館の提供を受けており、資料性は高い。

 「被爆者の体験談を後世に残そう」と、首都大学東京の渡邉英徳准教授が制作を提案した。デジタルデザインが専門の渡邉准教授は、長崎市でも高校生らと協力して同様のサイト「ナガサキ・アーカイブ」を2010年から公開。「ヒロシマ」制作に当たっては、原爆被害や日本の戦争加害、沖縄戦などを捉えた平和教育に中高一貫で取り組む広島女学院高に持ち掛けた。

 首都大の学生らがデザインなど技術面を担当。高校側は、核廃絶を求める校内の署名実行委員会のメンバー20人がかかわっている。顧問の矢野一郎教諭(52)は「当初は署名活動の参考程度に考えていたが、今では生徒が率先し、被爆者の証言を継承しようとしている」。アーカイブリーダーの石原香音[かのん]さん(17)は、「多くの人に核兵器や平和について関心を持ってもらいたい」との思いを込めているという。

 充実ぶりを裏付けるように、11年7月の公開当初約100人分だった被爆者の体験談は倍に拡充。さらに力を入れるのは、被爆者の肉声を動画に収録したインタビューだ。現在30人分。生徒たちが被爆者と向き合い、直接聞き取った証言映像をそれぞれ15~30分にまとめて公開している。

 「被爆者の皆さんにとってつらい話を、しっかりと受け止めながら作業をしている。話を聞くたびに核兵器は無くすべきだと再確認している」と石原さん。生徒たちを見守る矢野教諭は「制作を通して被爆者の体験を記憶し、語り部として成長している。被爆者の高齢化は進んでおり、記憶の伝承のために続けていきたい」と話している。(後藤仁孝)

(熊本日日新聞8月5日朝刊掲載)

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