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被爆を語り継ぐ、2014ヒロシマ・ナガサキ(下)=二世・三世の会 体験の共有「地道に」

 6日、広島は69回目の原爆の日を迎えた。近年の式典には、被爆2世や3世の姿も目立つようになった。被爆者が減少し、高齢化しているためだ。

 熊本県でも同じ状況が加速している。県によると、県内の被爆者は3月末現在で1326人で、昨年から80人減った。平均年齢は81・07歳に上がった。

 「原爆への関心が薄れてはいないか」。県原爆被害者団体協議会(県被団協)の事務所で、事務局次長の朝長民子さん(85)は嘆いた。被爆体験を児童や生徒に話す「語り部活動」を続けているが、その依頼が10年前の年間約30件から昨年は5件まで激減したのだ。

 広島の原爆ドームのほか、長崎で背中に大やけどを負った少年の写真、原爆投下直後の惨状を描いた絵画などのパネルも無料で貸し出しているが、ほとんど注文はない。県内の小学生の大半が修学旅行で長崎市の原爆資料館を訪れているとはいえ、朝長さんは「被爆体験が受け継がれているのか不安になる」。

 県被団協は1958年11月に発足。犠牲者を悼み、被爆体験を語り、被爆者のために原爆症認定申請や訴訟の支援を続けてきた。現在、約800人の会員がいるが、このうち集会などに参加するのは30人ほど。組織の運営が難しくなっている。

 そんな危機感もあって、県内の被爆者の子や孫らでつくる「熊本被爆二世・三世の会」が2012年11月に結成された。被爆者の思いを引き継ごうと年に3回、被爆者の体験を聞く「継承する会」を開き、小峰墓地(熊本市中央区)にある「原爆犠牲者の碑」の清掃、慰霊式典などに取り組んでいる。

 発足当初は23人だった会員も年々増えて52人に。父辰次さん(故人)が長崎で被爆した高校教諭の青木栄会長(53)=熊本市=は「今は手伝いの段階だが、これからは自分たちが被爆者運動に主体的に取り組みたい」と意気込む。被爆による遺伝的影響を不安視する2世も多く、「2世の健康診断にがん検診も含めるよう、国や県に要望したい」。

 県被団協の長曽我部久会長(78)は「被爆を語り継ぐには、2世の力が欠かせない」と期待する。だが、被団協の調査によると、2世組織があるのは全国で12都県にとどまる。被爆者が「差別などを恐れ、子どもに被爆者であることを知らせない」という現実。2世のなかには「被爆者の子どもであることを知られたくない」など複雑な心情ものぞく。

 「2世、3世の活動の輪が広がらないと、被爆体験を将来へ共有していくのは難しくなる」。青木さんは責任の重さを感じつつ、「核兵器の廃絶を訴え続けるため、地道に活動していくしかない」と力を込める。(後藤仁孝)

(熊本日日新聞8月6日朝刊掲載)

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