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2014ヒロシマ・ナガサキ=被爆69年の原爆ドーム 平和訴える無言の証人 崩れかかった壁、がれきの下に遺骨…

 原爆ドームの中は「あの日」のままだった。折れ曲がった鉄骨、崩れかかった壁、足元を埋め尽くすがれき。69年前の8月6日、この上空から広島の街に熱線と爆風が広がった。

 広島市の元安川沿いの被爆遺構として、ユネスコの世界遺産に登録された原爆ドーム。通常は立ち入り禁止だが7月末、市の許可を受けて中に入った。

 むき出しになった鉄骨が目に飛び込んできた。どれほどすさまじい破壊力だったのか。人間にも容赦なく襲いかかったと思うと、恐ろしくなった。「がれきの下には今も遺骨があります」。慰霊碑などを案内するピースボランティア永原富明さん(67)=広島県呉市=が、内部を見渡しながら説明した。

 原爆ドームは1915(大正4)年4月、広島県物産陳列館として建設。一部鉄骨のれんが造り5階建てで、銅板の楕円[だえん]形ドームが特徴だった。爆心地からわずか160メートル。爆風が真上から襲い、建物内を通って外に逃げたため、骨格と外壁が残ったとされる。

 夏の日差しが照り付けていた。しかし、ドーム内に差し込む光は少なく薄暗い。外はセミがうるさいほど鳴いているのに、がれきを踏む音だけが「ガシャガシャ」と響き渡る。ふと外を見ると、カメラを向ける観光客の姿。一面の焦土と化した広島を思いながら、69年という時の流れも感じた。

 「ここに来ると涙が出そうになる」と永原さんは言う。来年、原爆ドームは完成100年。補修を重ねながら、被爆70年の節目を迎える。人々の怒りや悲しみを抱えた“無言の証人”は、平和の尊さを訴え続けている。(後藤仁孝)

(熊本日日新聞8月8日朝刊掲載)  

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