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定期協議 5年で3回 原爆症認定 被爆者側は開催要望 厚労相対応に注目

 原爆症認定制度の課題を話し合う厚生労働相と日本被団協などとの定期協議がこの1年間、開かれていない。2010年1月から13年9月まで3回開いたが、被爆者側が繰り返し要望する中、次回開催の見通しが立っていない。今回の内閣改造で厚労相に就任したのは、広島市の原爆資料館の見学を「政治に関心を持った原点」という塩崎恭久氏(愛媛1区)。内実を伴う協議の場にできるか。塩崎氏の意欲が問われる。

 「被爆者の代表とお会いすることは大変意義がある。時間が許す限り、お話しさせていただきたい」。塩崎氏は19日の記者会見で、定期協議の開催に前向きな姿勢を示した。  定期協議は09年、原爆症認定集団訴訟を終結するために自公政権と被団協が設置に合意した。しかし、その後の2度の政権交代や内閣改造などもあり、この5年間で3回にとどまる。

 一方、昨年12月の原爆症認定基準の見直しなど、定期協議で取り上げられるべき課題もあった。厚労省被爆者援護対策室は「間隔が空いているという意識はあるが、大臣交代やデング熱患者の続出で日程調整は進んでいない」と説明する。

 塩崎氏は、自身のホームページで「小学4年の時に広島の原爆資料館を見学し、大きな衝撃を受けた」との趣旨の発言をした過去の新聞記事を複数紹介している。会見では「被爆され非常にご苦労されている方々にきちんと手当てしていかなければならない。被爆者援護行政の責任を負う立場として、前向きに取り組んでいく」とも強調した。

 原爆症認定制度をめぐっては、認定基準が見直された今でも国と被爆者側の主張が平行線をたどる。

 がん以外の病気で被爆の距離条件などを見直した新基準で、申請を却下された一部の被爆者が認定された。一方で、見直し後の条件でも対象外の被爆者が国を相手にした訴訟で勝訴が相次ぐ。被爆者側は「新基準でも行政認定と司法判断の隔たりは埋まっていない」と批判する。

 また、原爆症認定者に支給される医療特別手当(月約13万5千円)の更新審査が厳格化され、広島市など一部の自治体で更新されない被爆者が急増する事態も起きている。

 被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は「最低でも年1回という約束だったはずだ。国の不誠実な姿勢は簡単に変わらないのではないか」と不信感を募らせている。(藤村潤平)

原爆症認定制度に関する定期協議
 原爆症集団訴訟を終結させるため、2009年8月、麻生太郎首相(当時)が日本被団協と確認書を交わし、「今後、訴訟の場で争うことがないよう、定期協議の場を通じて解決を図る」とした。厚生労働相と被団協、集団訴訟の原告団、弁護団が出席して意見交換する。これまでに定期協議を開いた厚労相は長妻昭氏(10年1月)、小宮山洋子氏(11年11月)、田村憲久氏(13年9月)の3人。

(2014年9月22日朝刊掲載)

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