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放影研 円高でドル建て予算減少 民主幹事長に支援要請

■記者 金崎由美

 日米両政府が共同運営する放射線影響研究所(広島市南区)が、円高に苦慮している。年間運営予算の約4割を占める米エネルギー省(DOE)の補助金がドル建てのため、予算が目減りしているからだ。施設の大幅改修に着手できないなど具体的な影響が出ている。

 本年度予算は、長崎にある研究所の分も含め35億2200万円。このうちDOEの補助金は日米両政府の取り決めで1400万ドルと決まっている。放影研にはDOEから年度内に複数回に分け、ドル建てで支給される。

 予算の編成段階では想定レートは1ドル約95円だった。ところが今年5月以降、急激に円高が進み、10月末には15年半ぶりに1ドル80円台前半までドルが下落。今も円高基調は変わらず、大幅な減収に陥る事態に直面する。

 放影研では、被爆者、被爆2世の健康調査で集めた大量の血清や尿など検体を超低温冷凍庫で保管。年々検体が増え続けるため、大規模な保管場所の整備を計画している。しかし、円高の進行で財源のめどは立たないまま。倉庫部屋を転用し急場をしのいでいる。

 秋本英治事務局長は「仮に1ドル80円なら想定より2億円近い減収になる。放影研内部の経費削減策で対応できるレベルの金額ではない」と頭を抱える。

 国の来年度の予算編成が本格化する中、民主党の岡田克也幹事長が11日、放影研を視察に訪れる。この機会に民主党の支持組織である連合に加盟する放影研労働組合が支援を訴える予定だ。空美佐江委員長は「被爆者の協力で成り立つ研究。日本政府の責任で財源を安定化するよう求めたい」と強調している。

放射線影響研究所
 原爆の放射線が人体に与える長期的な影響の医学的調査をする研究機関。設立目的には「被爆者の健康保持及び福祉に貢献すること」とある。所管は米側がエネルギー省(DOE)、日本側は厚生労働省。予算は折半が原則だが、米国の財政難を理由に成人健康調査などの費用を日本側が上乗せ負担する。日米両政府は11月、今後5年間の予算支出を協議。従来通り米側が毎年度1400万ドルを支払うことで合意した。

(2010年12月10日朝刊掲載)

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