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「平和発信」が必修科目に 意識調査や被爆体験記データ化 広島大 まずは歯学部

 広島大歯学部が本年度、1年生の必修科目に「ひろしま平和発信」を初めて採り入れた。9月までの実習で、原爆資料館(広島市中区)の運営改善に向け、来館者の意識調査に協力。国立原爆死没者追悼平和祈念館(同)では、被爆体験記の電子データ化に取り組んだ。ヒロシマの学生であるとの自覚を深めてもらうため、同大は来年度にも全学部へ広げる方針だ。

 4~9月の年30時間余の科目で、95人の1年生全員が受講した。前半は被爆者の講話を聴き、市内の平和関連施設や慰霊碑を巡って原爆被害の実態を学んだ。

 8月から9班に分かれて実習。資料館では、来館目的や見学時間、印象に残った展示を問う日本語と英語の調査票を用意し、見学を終えた人に協力を呼び掛けた。75カ国・地域、計4556人分を集めたほか、来館者に鶴の折り方を教えるなど交流を深めた。

 祈念館では、被爆者の手記を館内の端末で手軽に読めるようパソコンで打ち込む作業を進めた。2人一組で誤字がないかを確かめ、計107編を仕上げた。

 市内で育った小田香菜子さん(19)=安佐南区=は「平和教育を受けたけど、ずっと受け身だった。被爆者の思いを受け継ぎ、発信する務めがあると再認識した」。奈良市出身の若林侑輝さん(19)=東広島市=は「遠い世界のように思っていた被爆体験を以前より身近に感じ、広島の学生の自覚が芽生えた」と話す。

 科目は、平和問題に関心を持ち、広く発信できる人材を育てるのが狙い。地域課題に関心を寄せ、自ら解決できる力を養う文部科学省の「地(知)の拠点整備事業」にも認められた。資料館と祈念館も「ヒロシマの継承につながる」と協力している。

 広島大の卒業生の約7割は、広島県外に就職している。学術・社会産学連携室は「ヒロシマを理解し、卒業後に進んだ先で発信する力を付けることは学生のためになるし、大学の存在感を高めることにもなる。他学部の1年生にも広げたい」としている。(田中美千子)

(2014年10月20日朝刊掲載)

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