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中電の鳥取県支援検討 再稼働にらみ駆け引き

 中国電力が鳥取県の原発防災費用の支援検討に乗り出す背景には、島根原発(松江市)の再稼働に向けた駆け引きがある。鳥取県など周辺自治体は、島根原発の稼働をめぐって島根県と松江市並みの権限を求めている。中電は一定の歩み寄りを図ることで、再稼働への地ならしを進める考えとみられる。

 「中電の協力が、島根2号機を再稼働する前提となる」。鳥取県の平井伸治知事は20日、苅田知英社長との面会後に言い切った。2号機は再稼働に向け、原子力規制委員会の適合性審査を受けている。審査に合格し再稼働の同意を求められても、財政支援がないままでは「住民と議論に入る環境ができない」と突っぱねる考えを示した。

 福島第1原発の事故後、国から防災対策を求められるエリアは拡大。周辺自治体も専門職員の採用などに迫られるが、財源が伴わない。島根県は1980年度以降、人件費にも充てられる核燃料税を中電から計166億円得た。周辺自治体には不満が募る。

 原発事故後に担当職員を2人増やした出雲市。坂本隆防災安全管理監は「人件費は市の負担。事故のリスクを共有する以上、財政支援が筋だ」と鳥取県の要請に賛同する。今夏、島根県が核燃料税の税率を上げる意向を明らかにしたのを受け、出雲市は雲南、安来の両市と核燃料税の分配を県に求める考えを示した。

 ただ、電力会社による地元への財政措置には批判もある。島根原発増設反対運動代表の芦原康江松江市議は「再稼働の取引をするつもりなのか。お金をもらえば稼働OKというのはおかしい」と指摘する。(山瀬隆弘、樋口浩二)

核燃料税
 原発がある道県が条例で電力会社に課すことができる税金。島根県は2015年3月まで、原子炉に挿入された核燃料の価格の13%と税率を定める。税の制度を創設した1980年の税率は5%だった。10年度の税収は7億円。11~13年度は燃料を挿入した実績がないためゼロだった。全国の12道県が課税している。

(2014年10月21日朝刊掲載)

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