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島根知事 財政支援後押し 鳥取県の原子力防災費 中電検討 

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)30キロ圏の鳥取県が20日、「再稼働の前提」とする原子力防災への財政支援の検討を中電から取り付けた背景には、稼働の判断権を持つ島根県の溝口善兵衛知事の後押しがあった。「周辺にも事故のリスクがある」との考えが根底にはあるが、稼働の判断を立地自治体だけに集中させず30キロ圏の総意として合意形成したい思惑も透けて見える。(樋口浩二)

 財政支援の検討に向け、広島市中区の中電本社で20日に会談した鳥取県の平井伸治知事と中電の苅田知英社長。冒頭、2人そろって溝口知事の影響を挙げた。「溝口知事の了解を取ってきた」。平井知事は事前協議の過程を明かし、苅田社長も「防災について(立地県と)同等、公平にということは溝口知事から伺っている」と応じた。

 溝口知事は今月中旬、財政支援を求める鳥取県の意向をくむよう中電幹部に電話。2号機の早期再稼働に向け地元の意向を「最大限尊重」する中電は20日、支援の検討開始を表明した。

 福島第1原発事故後に発生した防災費用を賄うため、財源を求める鳥取県の意向を踏まえ、島根県は当初、中電から徴収する核燃料税の配分を検討した。来年4月の改定期を前に、現行は燃料価格の13%とする税率を引き上げる根拠ともなるためだ。だが「県税の県境を越えた配分は県民の理解が得にくい」(県幹部)うえ、中電の意向もくんで断念。鳥取県と中電が直接交渉することになった。

 「原発周辺自治体」対「中電」の関係で溝口知事が調整役を担った局面は、昨秋にもあった。2号機の再稼働の前提となる適合性審査の申請を控えた地元の事前了解の時だ。立地する松江市を除いた原発30キロ圏の鳥取県と両県5市に対し、溝口知事は申請了解の是非を島根県が集約する仕組みを提案。全国の立地県でも異例の30キロ圏自治体の総意という形で申請を認めるレールを敷いた。

 2号機の審査が終われば、県と松江市には再稼働の是非を判断する場面が訪れる。稼働への発言権を持たない鳥取県と5市について、溝口知事は「意見をよく聞く」と繰り返す。原発稼働を審議する島根県議会には「自身の理念はないのか。周辺がものを言いやすい環境をあえてつくり、稼働判断の責任を分散したいように映る」(県議)との見方もある。21日、取材に応じた溝口知事は「防災面で鳥取県は島根県と同じ状況にあるとの観点から、中電に配慮が必要と伝えた」と述べた。

島根原発の稼働判断
 原発事故に備える30キロ圏2県6市のうち、再稼働・稼働を判断できるのは立地自治体の島根県と松江市。鳥取県と出雲、雲南、安来、米子、境港の1県5市は、稼働への発言権を与えるよう中電に再三要求しているが、拒否されている。

(2014年10月22日朝刊掲載)

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