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新START批准承認 ヒロシマ、歓迎と警戒

■記者 金崎由美

 米上院がロシアとの核軍縮条約「新START」の批准を承認し、同条約発効の見通しが立った。広島の被爆者や市民は23日、評価と冷めた見方を交錯させた。

 広島県被団協の坪井直理事長(85)は「被爆者の願いとは違う条約だが、失敗すれば核兵器廃絶運動にもマイナスだった。オバマ政権の努力は前向きに評価したい」と話した。

 広島市の秋葉忠利市長も「オバマ大統領が目指す『核兵器のない世界』の実現に向け大きな弾みとなる条約の発効に一歩近づいた」と歓迎のコメントを発表した。

 一方で、もう一つの広島県被団協の金子一士理事長(85)は「米ロが大量の核弾頭を配備し続けるための条約を手放しで歓迎するべきではない」と慎重姿勢。「廃絶を訴える草の根の声が今こそ大切だ」と強調した。

 オバマ政権は9月、「核兵器の信頼性維持」を目的に臨界前核実験を強行。11月には条約に反対する保守派への譲歩として、今後10年間で850億ドル(7兆550億円)もの巨費を核兵器施設の近代化などに振り向けることも提案した。

 このため、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会の森滝春子共同代表(71)は「核軍縮どころか核軍拡を招きかねない」と批准の「代償」を警戒する。

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長は「ロシアとの信頼関係の面から苦しい妥協をしてでも最低限クリアするべきハードルだった」と解釈。「これで包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准、さらなる核削減といった次の目標に向かえる。ヒロシマと国際世論の後押しがさらに必要だ」と話した。

(2010年12月24日朝刊掲載)

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