×

ニュース

島根県 場所未定のまま 原発事故時のスクリーニング 「安全な避難無理」の声

 島根県が、中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)で事故が起きた際の住民避難時に、放射性物質の付着を調べるスクリーニングの地点選定に手間取っている。広域避難が必要な原発災害では不可欠な作業だが、国の方針決定の遅れもあり福島第1原発事故から3年7カ月たった今も場所は未定。県は原発30キロ圏外の県内20~30地点を年度内に選ぶ方針だが、住民は早急に選定するよう求めている。(樋口浩二)

 県は18日、鳥取県、両県6市などと開いた原子力防災訓練で、原発33キロの出雲市、43キロの雲南市の2地点で住民と車両のスクリーニングをした。国の方針で30キロ圏外の避難ルート沿いを選んだが、正式な地点ではない。作業に必要な広さなどを精査し切れていないためだ。

 2地点の一つが県宍道湖西部浄化センター(出雲市)。訓練後には、線量を測定した放射線技師たちが「場所が手狭。実際には使えない」と指摘した。訓練では住民194人のうち代表の27人を測るにとどめたが、原発30キロ圏の県内人口は約39万6千人。実際の事故での測定は数万人単位に上る可能性もある。

 内閣府は6月にようやく、地点選定の方針を決定。これを受け、県は避難路にあり測定地点の設置を想定する出雲、雲南、安来の3市と選定議論を本格化させた。18日の訓練に参加した松江市城西公民館の森泰(ゆたか)館長(72)は「事故はいつ起きてもおかしくない。幹線道路沿いで分かりやすく、駐車スペースが広い場所を早急に示してもらわなければ安全な避難はできない」と訴える。

 地点選定には、地元同意の壁もある。線量が基準値を超えた場合、放射性物質を取り除く除染や除染後の処理が必要となるためだ。県避難対策室の小池誠室長は「3市の了承は欠かせない」という。また30キロ圏住民の避難先は県内と広島、岡山県の61市町村で、受け入れ先へも地点を説明する必要がある。小池室長は「説明を早く始めるためにも、3市との調整を急ぎたい」と話す。

 測定する人員確保や機器の調達も課題となっている。18日の訓練後、県診療放射線技師会の小林一郎会長は「実際の事故では人員、機器とも確実に不足する。国は県外から調達する仕組みを早く整えてほしい」と話していた。

スクリーニング
 衣服や車両へ放射性物質が付着しているかどうかを専用の測定器で調べる検査。内閣府が6月に決めた方針では、一般的とみる自家用車やバスを使った避難の場合、まず車両を測定。基準値以上の放射線量が検出されれば乗員の代表1人を測り、さらに基準を上回れば乗員全員を測る。

(2014年10月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ