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被爆者健康手帳の取得早い男性は長生き傾向 原医研調査

■記者 金崎由美

 被爆者健康手帳を早い時期に取得したほど、被爆者の男性では長生きする傾向にあることが、広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大谷敬子研究員たちの共同研究で分かった。原医研が12日に広島市南区の広島大広仁会館で開くシンポジウムで報告する。

 調査対象は、1960年から69年末までに被爆者健康手帳を取得し、1970年1月1日時点で生存していた15万9843人。原医研が管理する原爆被爆者データベースから抽出した。旧原爆医療法に基づき被爆者健康手帳を取得した被爆者は、1965年までは無料健康診断を年2回、1965年からは年4回まで受けられるようになった。

 大谷研究員たちは、被爆時年齢、被曝(ひばく)線量や性別などを考慮して統計学的に解析し、最大で10年となる手帳の所持期間の差が死亡リスクに影響しているかどうかを調べた。

 その結果、男性では早い時期に手帳を取得した被爆者ほど死亡リスクが低くなる傾向を確認した。特に30歳未満で手帳を持った被爆者では、1960年に取得していた人の1997年末時点の生存率が、1969年になってから取得した人より4%高かった。

 共同研究者の大滝慈教授は「健診が被爆者の健康維持に役立つことが数値で表れた。援護策拡充を検討する際の参考になる」と意義を語る。一方で女性の被爆者では差がはっきり出なかった。大谷研究員は「研究は着手段階。死因ごとの解析も必要だ」としている。

 シンポ「広島の黒い雨と関連する課題」は午前9時~午後5時。広島やカザフスタンなどの研究者16人が発表する。多くは英語。無料。

(2011年1月12日朝刊掲載)

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