×

ニュース

被爆死亡リスク「距離で説明できぬ」 広島で国際シンポ

■記者 金崎由美

 原爆投下直後に降った放射性降下物を含む「黒い雨」をテーマにした国際シンポジウムが12日、広島市南区の広島大広仁会館であった。直接被爆だけでなく、放射性降下物による内部被曝(ひばく)も死亡リスクに影響を与えることを考察した研究などを専門家15人が発表した。

 同大原爆放射線医科学研究所(原医研)の冨田哲治助教は、爆心地からの距離などで被曝線量を推定する現行の方式だけでは、死亡リスクの差を十分に説明できないとする共同研究成果を発表した。

 冨田助教たちは、爆心地から3キロ以内で被爆した約3万人を対象に死亡リスクの差を統計学的に解析。結果を広島市街地の地図に描くと爆心地を中心とした円状でなく、北西方向に突き出た楕円(だえん)状となった。

 黒い雨は爆心地から北西方向にかけて降ったとされており、冨田助教は「直接被爆以外の要素が死亡リスクに影響している可能性を示す結果だ」とし、さらなる研究の必要性を強調した。

 シンポは原医研が主催。旧ソ連の核実験場があったカザフスタンの研究者も参加し、専門家や市民80人が集まった。

(2011年1月13日朝刊掲載)

関連記事
被爆者健康手帳の取得早い男性は長生き傾向 原医研調査 (11年1月12日)

年別アーカイブ