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広島大大学院生の嘉陽さん被爆瓦 海外19大学へ寄贈

■記者 新谷枝里子

 原爆で焼け焦げた屋根瓦を広島市内の川底から拾い上げ、海外の大学に寄贈する活動を広島大大学院生の嘉陽礼文(かよう・れぶん)さん(32)が始めた。沖縄県出身で祖母から戦争の悲惨さを聞き、平和をうたう日本の憲法を大学院で専攻。「世界の若者にヒロシマの記憶を伝えたい」と不戦の祈りを込めた被爆瓦を送り届ける。

 瓦を集めたのは原爆ドーム(中区)近くの元安川などで、約100個、約20キロ分。約9年前から広島市などの許可を受けて進め、広島大教授たちに被爆品と鑑定してもらった。

 寄贈先は、エール大など米国の7校を含め欧州やアジア、アフリカなどの計19校。原爆で壊滅的被害を受けた広島大に戦後、書籍などの教材を提供した大学で、約500グラムずつ発送する。

 嘉陽さんは浦添市出身。祖母から、沖縄戦を生き延びた体験を聞いた。中学の修学旅行で広島を訪れ、原爆資料館(中区)で見た被爆瓦に、衝撃を受けた。

 大学入学後、自分の意思で始めた瓦集め。当初は、広島を訪れた外国人に贈っていた。「若い世代の平和学習に生かしてほしい」と思い付いたのが海外の大学への寄贈だった。

 昨年11月に瓦を送り届けたドイツのカールスルーエ大からは、平和交流への招待を受けた。嘉陽さんは「ヒロシマの記憶を風化させないよう、自分なりの発信を続けたい」と話している。

(2011年1月25日朝刊掲載)

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