×

ニュース

復興の「メサイア」時を超え再現 47年のクリスマス音楽礼拝 来月13日に広島流川教会 

 被爆地ヒロシマの年の瀬に、平和を願って響くヘンデルの「メサイア」。その歌声を広島県内に広げるきっかけになったのが、被爆2年後に広島流川教会(広島市中区)で開かれたクリスマス音楽礼拝だ。ラジオで県内に届けられた礼拝を再現するコンサートが12月13日、同教会である。広島の音楽関係者たちが毎年続けてきた「ヒロシマ・音の記憶」の最後を飾るシリーズ第5弾。人々に希望の光を与え、復興を支えた楽曲に込められた思いに迫る。(余村泰樹)

 被爆翌年から慈善音楽会を開き、人々を勇気づけ、癒やした同教会。牧師の故谷本清さんの元に、米国の知人から「メサイア」の楽譜30冊が届いたのは1947年秋。「メサイア」は、救い主キリストの誕生や受難、復活などを表現するオラトリオ(聖譚曲(せいたんきょく))だ。その年のクリスマス、音楽教師の故太田司朗さんを中心に教会員や学生で聖歌隊を組織し、音楽礼拝は開かれた。

 再現コンサートは、ヒロシマに関する音楽作品の発掘やデータベース化に取り組む「ヒロシマと音楽」委員会が企画。光平有希委員が、谷本さん宅で発見した当時の進行表に基づき、忠実な復元を試みる。

 プログラムの第1部では、広島流川教会の聖歌隊や広島女学院の卒業生を中心に結成した合唱団が登場し、礼拝を復元。第2部でメサイアを抜粋演奏する。

 進行表には、曲に託した思いも記されていた。市内の牧師は、世界平和のために広島が払った犠牲が無駄にならぬよう「犠牲をかへて祝福となし給ふキリストの御精神が今こそこの広島に生かされるべきを信じて疑ひません」と祈祷。人々への救いや街の復興を希求した。

 光平委員は「ラジオを通じ、教会だけでなく、広く救いを届けようとしたのだろう。今も受け継がれるメサイアを歌った当時の思いをあらためてひもとき、継承したい」と語る。

 コンサートは午後6時開演。千円(前売りのみ)。

 11月29日午後4時半からは中区の広島まちづくり市民交流プラザでシンポジウムを開催。広島の復興に果たした広島流川教会の役割を、音楽や思想、活動面から光平委員ら研究者3人がひもとく。同委員会Tel082(502)6304。

(2014年11月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ