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関電への電力供給白紙 中電検討 「余力あるなら再稼働不要」の批判受け

 中国電力が、火力の三隅発電所(浜田市)の2号機建設前倒しによる関西電力への電力供給計画を、白紙に戻す方向で検討していることが25日、分かった。島根原子力発電所(松江市鹿島町)の再稼働との関係をめぐり地元から異論が出ていることなどを考慮し、供給者を決める関電の入札への参加を見送る見通し。

 2027年度以降としていた三隅2号機の稼働予定を入札条件に合わせて21~23年度に早め、出力を40万キロワットから100万キロワットに引き上げる計画での入札参加を検討していた。しかし、管内の安定供給に島根原発の再稼働が必要と説明しながら、他方で域外への電力販売を検討するのはつじつまが合わないとの指摘が、地元で強まった。

 原発の稼働に理解を示す島根県議会最大会派の自民党議員連盟の一部は「原発稼働が不確かな今、域外への供給計画を進めるのは余力の表れ。原発稼働に反対する声が高まる」などと反発。反原発団体は「出力の大きな三隅2号機を動かすなら、原発の稼働は不要」と主張していた。

 関電の入札締め切りが28日に迫り、中電内部には「地元の理解が得られない状況では落札は難しい」との見方が強い。また、三隅2号機の一部電力を中国地方に供給するための手続きが間に合わない可能性も出てきた。地元の理解が得られない中、今回の入札を見送り原発の稼働を優先するとみられる。(樋口浩二、山瀬隆弘)

【解説】中電、原発稼働を優先

 中国電力が、検討していた火力の三隅発電所(浜田市)の増設による関西電力への電気の供給を見送る方向となったのは、島根原子力発電所(松江市鹿島町)2、3号機の稼働を優先させるためだ。島根県議会など地元との融和を重視し、電力業界で激しくなる競争への備えを当面、後に回す形となる。

 電力小売りの全面自由化が2016年に迫る一方で、中国地方の需要は伸び悩む。中電は「域外に新しい収益源を検討する必要がある」(苅田知英社長)として、他電力の入札を前向きに検討してきた。

 だが今回は、島根原発の稼働に理解を示す島根県議会最大会派の一部が「域外に供給するために火力を増設すれば、供給に余力があるとの住民感情が高まるのは必至」などと反発。原発稼働に責任が持てなくなると中電に迫った。

 また、新設火力から150万キロワットを調達する関電の入札には、神戸製鋼所が最大出力140万キロワットでの参加を表明。中電には落札に失敗し、地元とのあつれきから原発稼働も難航すれば、原発と火力が「共倒れ」となるリスクもあった。

 中電は三隅2号機を新設する計画は維持し、管内向けの電源として稼働を早める道も探る見通し。石炭火力は温室効果ガスの排出量が多く、環境規制が強まれば建設が制限される可能性もあるためだ。

 自由化をにらんで火力の新設は全国で広がる。原発の再稼働との優先順位をめぐり、電力会社が難しい判断を迫られるケースが今後も出てくる可能性がある。(樋口浩二)

(2014年11月26日朝刊掲載)

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