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戦争の悲惨さ 訴えた生涯 作家ズットナー オーストリアのガイド 三原で講演

 1905年、ノーベル平和賞を女性で初めて受賞したオーストリアの作家で平和運動家ベルタ・フォン・ズットナー(1843~1914年)=写真=の没後100年を記念し、同国公認のガイド、イップ常子さん(65)=広島市安佐南区出身=が三原市のリージョンプラザで講演した。戦争の悲惨さを告発する先駆けとなった彼女の生涯を紹介した。

 ズットナーが生きた時代、欧州では戦争が繰り返され、彼女もウィーン郊外の城で多数の負傷兵を介護。友人が戦争で夫を亡くし、再婚した夫もまた戦死するといった悲劇も数多く目にした。そのような実態を描いたのが、代表作となる小説「武器を捨てよ」だった。

 当時は、戦死者を英雄視したり、戦争を賛美したりする風潮の強い男性中心社会。戦死者の家族の惨めさなどに目を向け、女性の視点で戦争に反対した彼女への反発は強かったが、小説はベストセラーとなり、十数カ国語に翻訳された。親交のあったノーベル賞の創設者、アルフレド・ノーベルに平和賞を設けるよう提案したのも彼女だった。

 日本では、ほとんど知られておらず、講演会の参加者も多くが初めて知ったという。だが、母国では長年、紙幣や貨幣に肖像が描かれ、人気俳優が今年、日本など世界各地で彼女の役を一人芝居で演じて回るなど今なお尊敬を集めている。イップさんは「世界的に混迷を深めている今だからこそ、戦争がいかに悲惨かを訴えた彼女の生きざまを知ってほしい」と結んだ。(冨沢佐一)

(2014年12月1日朝刊掲載)

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