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社説・コラム

社説 ’14衆院選 きょう公示 日本のこれから 論戦を

 衆院選がきょう公示される。475議席をめぐり、与野党の候補者たちが14日の投票日に向けて論戦を繰り広げる。

 自民、公明両党は、解散時の300を超える勢力の維持を狙う。野党は、民主党が小選挙区の候補者をそろえられず、「政権交代」の旗を掲げられなかった。維新の党などと共倒れを避ける調整を進めてきたが、野党の統一候補として戦える態勢づくりまで至っていない。

過去2回と違う

 2009年、12年と続いた政権を選択する衆院選とは明らかに様相が異なっている。自民党が「1強」を保てるか、野党が与野党伯仲を実現できるかという構図が浮かび上がってきた。

 任期を半分残して解散するという、与党ペースで持ち込まれた選挙である。長期政権への布石とみる向きが強く、いわば政治の都合といえる。

 有権者から見れば、この時期になぜ衆院選なのか、いまだふに落ちないのは無理もない。しかし、きっかけがどうであっても、私たちの未来や暮らしがかかった重要な選挙であることを忘れてはなるまい。

 日本は大きな転換期にあるといわれて久しい。人口減少は止まらず、数十年後には1億人を切ると推計されている。労働人口が減り、社会保障制度を支えていく仕組みが揺らぐ。経済成長を目指してきた路線にはとうに陰りが見え、若い世代を中心に経済格差が広がっている。

 国際情勢もしかりである。米国が国際秩序を主導するパワーバランスは崩れ、中国が経済と軍事の両面で台頭している。折しも来年は戦後70年を迎えるにもかかわらず、日本は中国、韓国と歴史認識などですれ違ったままである。領土問題を抱えるロシアを含め、近隣外交が問われていよう。

内も外も閉塞感

 こうして内も外も閉塞(へいそく)感が漂い、出口が見えてこない。どうすればいいのか、誰も具体的な処方箋を示しきれていないのが現実である。

 国政選挙では、どんな国を目指していくのかが、根底では問われるべきであろう。なのに、政治の側が応えきれていないと映る。このたびの与野党の公約を見ても、中長期で描いた国の姿が浮かび上がってこない。スローガンばかりが先行し、肝心な政策はあいまいな表現にとどめられている。

 安倍晋三首相はアベノミクスで信を問いたいと争点を提示している。しかしこの2年間は、集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法など国民の賛否を二分する政策を押し進めてきた。憲法9条に基づく平和主義の在り方に関わるものであり、こうした「安倍政治」の是非こそ、問われよう。国会でも議論が不十分なままである。選挙を通して、とりわけ批判の声、異なる意見に耳を傾けるべきではないか。

 野党はといえば、政権批判に終始していないだろうか。これまでの党首討論では、物価の上昇に賃上げが追いついていない、中小企業や地方では景気の回復が感じられないなどと、追及する政党が多いようである。だからといって代案を明確に示しておらず、議論がかみ合っていない。

 有権者にとっては選択肢が見えにくい。政治に対するむなしさが強まるばかりである。  公示を前にした共同通信社の世論調査で、今回の衆院選に関心があるという層は67%にとどまった。前回の12年には、同時期に80%を超えていた。盛り上がりはいまひとつのようだ。その前回は、投票率が6割を切って戦後最低となった。

「1票」が決める

 棄権すれば、それだけ有権者は軽く見られるだろう。投票率が高いほど、政党や政治家にはプレッシャーとなる。次の選挙での信認を考えると、国民の声を聴き、将来を見据えた政策を実行しようと緊張感をもって仕事に臨むのではないか。

 政治を良くするのも悪くするのも、私たち有権者の1票が決めていく。「日本のこれから」の論戦を求めて、熟慮した選択につなげたい。

(2014年12月2日朝刊掲載)

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