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両陛下 被爆者に思い 養護ホーム訪問 心身の傷いたわる

 被爆70年を元気に迎えて―。4日、広島市で原爆慰霊碑を訪れた後、齢(よわい)を重ねた被爆者たちと懇談した天皇、皇后両陛下。あの日から続く心身の傷をいたわり、平和を大切に思う気持ちを重ねられた。

 被爆者100人が入所する安芸区の原爆養護ホーム「矢野おりづる園」で約20分間、代表の10人に1人ずつ声を掛けられた。陛下は「原子爆弾とお知りになったのはどれぐらいたってから」などと当時の状況を質問。「ご苦労の日々が多いでしょう」と戦後の生活を気遣った。祇園町(現安佐南区)で被爆したという奥田百合枝さん(90)は「本当に被爆者を思いやってくださり、ありがたい」。

 皇后さまは入市被爆し、子どもたちに証言活動をしている長尾綾子さん(86)を「どうぞ元気で続けてください」と励まされた。

 陛下は皇太子時代の1949年4月、初めて見た被爆地で「あの惨劇に二度と人類を陥れぬよう、私たちは固い決意をもって平和のため進まねばならない」と述べられている。両陛下の訪問は即位後、6回目。今回で、市内に四つある原爆養護ホームを全て訪ねたことになる。

 おりづる園に先立ち訪れた中区の平和記念公園では、小雨が降る中、中央参道を歩いて進まれ、市民たちの歓迎に丁寧に応えられた。18年ぶりに向き合った原爆慰霊碑。納められた原爆死没者名簿は、この間に約9万5千人分(40冊)増え、29万2325人分(107冊)になった。

 被爆地に立つ両陛下の姿に、南区の無職松浦義則さん(66)は「日本の平和、国民の幸せをいつも願っておられるのだろう」。祖母が被爆者という安佐南区の津田ますみさん(38)は生後4カ月の長男陽一朗君を胸に抱き「大きくなったこの子に、きょうの様子を伝えたい。その時も、平和な世の中が続いていてほしい」と願った。

(2014年12月5日朝刊掲載)

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