×

社説・コラム

[現場から2014衆院選] 制度見直し 誘致に暗雲 再生エネ 江津市「国は長期展望を」

 太陽光、水力、風力など再生可能エネルギー施設がそろい、「再生エネのまち」を目指す江津市や市内の事業者が、国の固定価格買い取り制度の見直しに揺れている。関係者からは「国は長期的な展望を示してほしい」との声が上がっている。(松本輝)

 石州瓦製造最大手の丸惣(同市二宮町)は2013年、同市敬川町に大規模太陽光発電所(メガソーラー)=出力1918キロワット=を設置。年間約9900万円の売電収入がある。11年ごろからは主に県内や九州の事業者に向けて太陽光パネルを販売、設置し、年約1億5千万円を売り上げる。

 だが、売電契約の急増で電力の安定供給に支障が出る恐れがあるとしてことし9月、九州電力が再生エネの受け入れを中断。国が制度見直しに着手したこともあって、佐々木賢一社長(68)は「来年の売り上げは半分程度になるだろう」という。

 再生エネは12年7月の制度開始以降、買い取り価格が高い太陽光発電を中心に急増。送電量が限界を超える恐れがあるとして、九電に続き東北電力など電力4社も相次いで受け入れを中断した。中国電力も10月、受け入れ制限の可能性を示した。中電によると、県内で稼働中の再生エネ施設は、太陽光が1万1529カ所(3月末)と99%を占める。

 電力会社の買い取り費用は電気料金に上乗せされる。経済産業省の試算によると、これまでに認定した設備がすべて発電を開始した場合、標準家庭の毎月の上乗せ額は現在の225円から935円に大幅に上昇する。

 電力会社の動きと電気料金の国民負担の増加を受け10月、経産省が制度の抜本的な見直しに着手した。現在の買い取り価格が1キロワット当たり32円と他の発電方法よりも11~18円高いメガソーラーなどの価格引き下げ、メガソーラーの設備認定の一時中断、電気料金の国民負担の上限設定などを検討。15年度の買い取り価格に反映させる方針。

 制度開始を受けて「再生可能エネルギーの積極的導入」を掲げ、企業誘致に取り組んできた同市は、見直しに危機感を強める。現在、市内には民間事業者や県企業局が設置したメガソーラーが3基、風力発電施設20基、水力発電施設4基があり、総出力量は計約5万7千キロワットに上る。「制度開始当初は『再生エネ歓迎ムード』だったが、雲行きが怪しくなってきた」と山下修市長。市内では今後も、3業者がメガソーラー設置を検討している。「国が制度を見直せば誘致に影響する。長期的な展望を示してほしい」と求めている。

(2014年12月8日朝刊掲載)

年別アーカイブ