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連載・特集

廃炉の世紀 第2部 日本の選択 <5> 集中(六ケ所村) 

核のごみ 背負う重み 解体廃棄物 埋設研究も

 侵入を防ぐフェンスに囲まれた740ヘクタールの広大な敷地が、原野に広がる。本州北端、下北半島にある青森県六ケ所村。全国の原子力発電所から出る放射性廃棄物が、人口1万800人のこの村に、集中して運び込まれている。

 敷地の一角、低レベル放射性廃棄物埋設センターには灰色のコンクリート構造物が並んでいた。中には、原発で使われた金属などを収めた200リットルのドラム缶約27万本が埋め込まれている。

 「低レベル放射性廃棄物はここに埋めて、影響がない水準になるまで300年間管理します」。9電力会社などが出資し、施設を運営する日本原燃の赤坂猛広報部長が説明した。センターが稼働したのは1992年。島根原発(松江市)からはこれまで約1万9千本が送られた。

 村は約30年前、電気事業連合会(電事連)の要請を受けて、使用済み燃料を再利用するための核燃料サイクル施設の立地を受け入れた。現在、日本原燃の敷地にはほかに、使用済み燃料の貯蔵施設と、原発の使用済み燃料を再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物を一時保管する貯蔵管理センターがある。

 さらに、使用済み燃料を再処理する工場を建設中。核燃料サイクルの中核施設となる予定だが、稼働時期は延期を繰り返す。現状は、核のごみと、行き場のない使用済み燃料が増え続けている。

 「廃炉のごみも青森県が背負うのか」―。地元には新たな懸念が広がっている。敷地内の地下100メートルで行われている調査が、その要因だ。日本原燃は2001年度から電事連の要請を受け、廃炉などで出る、低レベルの中では最も汚染度が高い「レベル1」の廃棄物を地中に埋める研究を始めた。地下に「試験空洞」を整備し、国も調査を続けている。

 電事連は「電力会社全体で共通に処分するため、場所や方法を検討中」と説明。日本原燃の工藤健二社長は5月、自民党の会合で「現時点で何も決まっていない」としながらも、受け入れに前向きな姿勢を示したという。

 村の低レベル放射性廃棄物埋設センターは現在、廃炉で出る廃棄物は受け入れていない。「廃炉に伴う解体廃棄物は対象外」(日本原燃)としているためだ。

 資源エネルギー庁は国内の原発全てが廃炉になった場合、約50万立方メートルもの大量の低レベル放射性廃棄物が生じると試算する。放射能を帯びた制御棒など、レベル1の廃棄物が処分できるかどうかは、廃炉の行方を大きく左右する。

 青森県原子力立地対策課の天内章司課長は「電力側から説明や要請はなく、検討する段階にない」と強調する。ただ、核のごみをめぐっては国民的な議論が乏しいと感じる。「青森はこれまで放射性廃棄物や使用済み燃料を引き受けてきた。その重みは理解されているのだろうか」

核燃料サイクル
 原発の使用済み燃料を再処理し、取り出したウランとプルトニウムを混合酸化物(MOX)燃料にして原発で再利用する仕組み。ただ、利用の中核となる高速増殖炉の原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)はトラブルが続き、原子力規制委員会が昨年5月、事実上の運転禁止命令を出した。仕組みを推進するめどは立っていない。

(2014年12月10日朝刊掲載)

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