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秘密保護法 懸念や注文 「チェック働かぬ」「問題点 見直しを」

 「外部のチェック機能が働かない」「問題点が見つかれば速やかに見直しを」―。国民の「知る権利」が侵害される恐れが指摘される特定秘密保護法が施行された10日、本紙連載「施行迫る 特定秘密保護法」に登場した各界の識者からは、今後の法運用について懸念や注文が相次いだ。衆院選で各党が活発に論戦するよう求める声も聞かれた。

 政府は二つの監視機関を設置したものの、いずれも政府内部のチェックにとどまる。元経済産業省官僚で「改革派」と呼ばれた古賀茂明さん(59)は恣意(しい)的な運用への懸念を示し「特定秘密の範囲の決定など、常に政府が最終的な権限を持ち、外部のチェック機能が働かない。対策はまったく不十分だ」と指摘。法の運用停止を前提に「情報公開法と公文書管理法を改正し、情報公開の強化に取り組むことが必要」と強調した。

 秘密保護法は違憲として同法の無効確認などを求める訴訟を東京地裁に起こしているフリージャーナリストの寺沢有さん(47)は「表現の自由や国民の知る権利を保障する具体的な条文がない」と主張。「新政権には運用の停止を求めたい」と訴える。

 政府は、友好国との情報共有やスパイ防止などを法の目的に掲げ、情報漏えいへの罰則は最高で懲役10年と強化した。海上自衛隊呉地方総監の伊藤俊幸さん(56)は「他国と機密性の高い情報を共有する上で法は欠かせない」とする。元大蔵官僚で嘉悦大ビジネス創造学部教授の高橋洋一さん(59)は法の必要性を認めた上で「実際に運用する中で問題点が浮かび上がれば見直してほしい。秘密の範囲自体を狭めていく努力も必要」と話す。

 広島弁護士会の板根富規さん(62)も法の趣旨に賛成の立場。ただ、秘密を扱う公務員や民間人の身辺を調べる適性評価については「国民の不安をぬぐうためにも、具体的な手順を明らかにしてほしい」と要望する。

 衆院選の投開票日を4日後に控えるタイミングで法の施行日を迎えた。海上自衛隊の護衛艦乗組員のいじめ自殺訴訟の弁護団長を務め、「国の隠蔽(いんぺい)体質を目の当たりにした」という横浜弁護士会の岡田尚さん(69)は「情報隠しがさらに横行する」と危機感を強める。「これだけ反対と批判の多い法律。各党とも、もっと争点にすべきだ」と、法の施行を契機に論戦が活発化するよう求めた。(胡子洋、根石大輔)

(2014年12月11日朝刊掲載)

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