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社説・コラム

[現場から2014衆院選] 漁途絶え60年 再開いつ 竹島問題 

 日韓両国が領有権を主張する隠岐の島町の竹島(韓国名・独島(トクト))で、隠岐諸島の住民が最後に漁をしてから、ことしで60年。住民は領有権の早期確立を願うが、日韓関係は首脳会談がいまだに開けないほどに冷え切っており、解決の糸口すら見えない。一向に進まない対応にいらだちの声が上がっている。(川井直哉)

 「小笠原諸島の周辺海域に出没する中国船とみられるアカサンゴ密漁船の報道に、韓国船に漁場を荒らされる竹島の姿が重なって見えた」と、竹島周辺に漁業権を持つ隠岐島漁連の浜田利長会長(75)=同町。

 かつて竹島周辺はアワビやサザエなどの好漁場だった。だが住民が竹島で最後に漁をしたのは1954年5月3日。同年9月には、韓国政府が駐留部隊を派遣し実効支配を始めた。漁連は竹島の半径500メートルの海域に漁業権を持つが、近づくことができなくなった。

 浜田会長は「韓国船は竹島周辺で、違法な漁具を使って乱獲していると聞く。漁を再開したいが、いつになったら国が解決してくれるのか」と憤る。

 だが、衆院選(14日投開票)で、隠岐諸島を含む島根1区の3陣営は、アベノミクスや消費税増税問題の訴えに時間を割き、竹島問題にはあまり触れない。11日までに隠岐諸島を訪れたのは共産新人(60)だけで、自民現職(70)と民主新人(67)は、陣営幹部たちが本人に代わって島を巡った。

 竹島への出漁港があった同町久見地区の石橋雄一さん(57)は「韓国大統領が竹島に上陸した2012年の前回選と比べ、世間の関心度は低い。仕方がない」と諦め顔。「国が本気になってくれないと、状況は変わらないのに」と嘆く。

 外交で進展がない中、教育面では問題への対応に変化が見え始めた。来春から小学校社会の教科書に「竹島は日本固有の領土」などの記述が加わる。

 かつての竹島での漁の様子などを描いた絵本「メチ(アシカ)のいた島」の作者、元小学校教諭杉原由美子さん(71)=同町=は期待する。「09年から副読本などで竹島問題を授業で学んでいる県内の小中学校では、関心を持つ子どもが増えてきた。全国の子どもが今より関心を持てば、国も変わるかもしれない」

(2014年12月12日朝刊掲載)

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