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元残留邦人の生活サポート 広島市中区の「百合花」運営デイサービス 中国人職員配置/無料相談も

 中国から帰国した残留邦人を支えようと、介護サービスの百合花(広島市中区)が、運営するデイサービスへの受け入れを積極的に進めている。日本語を十分に話せず、周囲から孤立し、高齢化する元残留邦人の居場所をつくるのが目的で、中国人スタッフがサポートする。無料で相談にも応じている。(永里真弓)

 中区の広瀬小近くにあるビルの1階。60代後半から80代までの10人が中国語で会話し、塗り絵やマージャン、トランプを楽しむ。ほとんどが元残留邦人。スタッフ10人のうち、半数が中国人だ。

 元残留邦人の斉藤和子さん(65)は現在、安佐北区で1人暮らし。日本語を少ししか話せず、体が弱ってきたがデイサービスの利用に踏み切れずにいた。約1年前に同社を知り、現在は送迎付きで週4回訪れ「足腰が弱くなってきた。こういう場所があるとうれしい」。

 百合花は2013年5月、デイサービスと訪問介護事業所をオープン。中国出身で日本国籍を取得した益田賢太郎さん(44)=安佐北区=が通院や買い物に困っている実態を知り、開設した。「現状を悲観し、自殺した人もいる。安心して過ごせる場所が要ると思った」。現在は両施設を計約50人が利用している。

 中国・四国中国帰国者支援・交流センター(南区)によると、市内にいる元残留邦人やその家族のうち、65歳以上は推計200人。田中知子企画主任は「意思疎通の配慮が少しあるだけでも大きな助けになる」と話す。

 同社は月2回、介護保険制度や医療制度に関する相談会を開催。通院時の通訳にも無料で応じている。益田さんは「一層の高齢化を見据え、入所施設の設立も目指したい」としている。同社Tel082(208)1007。

中国残留邦人
 第2次大戦の終戦時、さまざまな理由で中国から帰国できずにとどまった日本人。現地で中国人と結婚したり、中国人に引き取られたりしたが、1972年の日中国交正常化を機に多くが帰国した。厚生労働省によると、全国の永住帰国者(11月末現在)は孤児2555人、婦人等4152人。家族を合わせると2万883人に上る。

(2014年12月13日朝刊掲載)

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