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社説・コラム

社説 COP20閉幕 温暖化の現実に備えを

 衆院選の投開票と同じ日に、温暖化対策をめぐる国際社会の重要な話し合いが終わった。

 ペルーで開かれた気候変動枠組み条約の第20回締約国会議(COP20)である。会期を2日延長した末に、温室効果ガスの削減目標についての基本ルールに全会一致で合意した。

 もちろん一定の前進ではあろう。ただ中身を見ると最低限のものにとどまり、多くの対立点が先送りされた。1年後にはフランスでのCOP21で、全ての国が加わる2020年以降の対策の枠組みづくりを目指す。このままでは本当に実効性ある合意につながるか心もとない。

 温暖化は地球規模で災害の増加を現に招いている。海水面上昇のリスクは太平洋の島々ばかりか、バングラデシュなど人口密集国にも及び、移住を余儀なくされる「気候変動難民」すら想定され始めている。

 なのに先進国と途上国の対立が毎年の締約国会議で繰り返されてきた。ことしは温暖化対策に消極的とされてきた米中両国が一転して前向きな姿勢に転じたものの、大詰めになっていつもの構図が繰り返された。妥協のために合意が「骨抜き」に近い格好になったのは残念だ。

 何より見過ごせないのは、重要なポイントが交渉途中で抜け落ちたことである。削減目標の中身を事前に比較し、多国間で互いに評価していく仕組みだ。これがなければ基本的に各国の裁量に委ねられることになり、言いっ放しの恐れも出る。

 干渉を望まない中国などの意をくんだふしもある。削減方法や目標年の設定についても、あいまいさを残した。これでは全体の削減幅がどれだけ上積めるかが不透明になりかねない。

 日本政府はどうか。こうした生ぬるい雰囲気においてさえ取り残された感は否めない。世界5位の排出量の先進国というのに削減目標はおろか、提出時期すら明言できなかったからだ。

 官民一体で輸出拡大を図ろうとしている高効率の石炭火力発電所の技術についても非政府組織(NGO)から厳しい批判を浴びた。温暖化防止に逆行し、再生可能エネルギー普及の足を引っ張るというものだ。

 国際社会の潮流を読み、これ以上孤立しないための取り組みが求められよう。まずは選挙で争点にもならなかった削減目標をすぐ議論したい。原発再稼働の行方を含むエネルギー政策との兼ね合いで遅れている、というのはもう理由になるまい。

 COP20において、望月義夫環境相は再生可能エネルギーの導入拡大も高らかに表明した。ならば原発に頼らない温暖化防止の手段こそ、世界の信頼を取り戻す道ではないか。その中では成長の夢を追い、経済の拡大こそ是とするアベノミクスとの整合性も当然問われてくる。

 日本が積極的に果たすべき役割は、ほかにもあろう。途上国支援である。これまでのような温室効果ガス削減に向けた技術や資金の供与に限らない。

 今回の合意文書には、実際に気温上昇が進んだ場合の被害を軽減する「適応策」の強化も盛り込まれた。現実的な発想ともいえよう。防災事業や農産物の品種改良、あるいは温暖化で生まれる難民の救済などと多様な分野に広がってくるはずだ。起こりうる未来を見据え、日本ならではの貢献策を考えたい。

(2014年12月17日朝刊掲載)

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