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社説・コラム

社説 再生エネ制度見直し 普及拡大に本腰入れよ

 太陽光など再生可能エネルギーを普及させる要のはずの固定価格買い取り制度が、導入から3年目で見直される。

 これまでは、再生エネで発電された電気の購入を電力会社に義務付けてきた。来年1月中旬からの新しいルールでは、買い取る電力量が多すぎる場合、電力会社が太陽光発電の事業者に出力の抑制を依頼しやすくする。補償金なしでいつでも求められるように変える。

 一定の期間にわたって全量を買い取るという、制度の根幹が崩れることになる。これでは、福島第1原発事故をきっかけに政府が進めてきたはずの再生エネの普及にブレーキがかかりかねない。

 太陽光発電の買い取り価格も引き下げていくという。事業者にとっては、買い取ってもらえる電気の量が見通せなくなり、収入も減る可能性が大きい。新しく参入するハードルが上がったといえるだろう。準備を進めてきた事業者や地方自治体が困惑するのは当然である。

 制度を見直すのは北海道や東北、四国、九州、沖縄の大手電力5社が新規契約の受け付けを中断したためだ。太陽光発電を始める業者が急増し、電気の供給が需要を大きく上回る恐れがある。すべて受け入れると送電網の容量を超え、供給が不安定になって停電もあり得ると、電力会社側は説明している。

 政府の制度設計が甘かったのが要因だろう。導入直後から、「買い取り価格が高い」「事業者を優遇しすぎだ」と専門家が指摘していた。

 今回の見直しには、再生エネの拡大で安定供給が妨げられると懸念する電力会社への配慮が色濃い。制度が始まって以来、少なくとも大型原発8基の発電量に相当する再生エネの設備が増えた。政府はさらに拡大させる方策に知恵を絞ることこそ重要ではないか。

 発表された太陽光発電の受け入れ可能量はそもそも、福島の事故前と同じ規模で原発を再稼働させることを前提に算出されている。政府のエネルギー基本計画は、原発への依存度を引き下げ、再生エネの導入を最大限加速させると明記したはずで、矛盾していないか。

 安倍晋三首相が繰り返してきた原子力、火力、再生エネなどの「ベストミックス」が、原発重視に偏った電源比率の構成になりかねない。

 政府は太陽光に偏らず、地熱や水力による発電を促進するとしているが、いずれ同じような課題に直面するだろう。送電網の増強や、電力会社間のやりとりで電力需給の変動を調整する改善策をもっと急ぐべきではないか。そうした費用を誰が負担するのかなど、普及の拡大に向けた改革について、本腰を入れて議論すべきだ。

 分散型で地産地消の再生エネ事業は、自然に恵まれた地方に適し、地域自立の柱ともなり得る。政府は「地方創生」を掲げ、産業や雇用の創出を支援していく考えのようだ。ならば、再生エネの普及を絡めた創生の方向性を打ち出してもよいのではないか。

 実際、金融機関や中小企業、自治体、市民の手による「ご当地発電」の試みは各地で増えている。被災地福島も復興事業の柱にしている。そうした動きに水を差してはなるまい。

(2014年12月22日朝刊掲載)

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