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不賛同 被爆地に怒り 核兵器禁止文書 政府に方針転換迫る

 核兵器禁止に向けた努力を誓おうとオーストリア政府が各国に賛同を求めている文書に、日本政府が賛同しない方向で検討していると報じられた18日、被爆地広島に怒りが広がった。核兵器禁止条約の交渉入りの後押しになる文書だけに、被爆者たちは被爆国政府に方針転換を迫っている。(田中美千子)

 「悲願の実現に向けた一歩なのに。被爆国が足を引っ張るとは」。広島県被団協の坪井直理事長(89)は声を荒らげた。日本政府への抗議も検討するという。

 オーストリアは国際社会で核兵器の非人道性に関する議論を主導する国の一つ。核兵器を非難し、廃絶・禁止に向けた法整備の必要性に触れた文書は、1月半ばに国連加盟国へ配った。賛同国を募り、4月27日に米ニューヨークの国連本部で始まる核拡散防止条約(NPT)再検討会議に提出する構えだ。日本は非人道性を理解しつつ、賛同も反対もせず、「核の傘」を差し出す米国への配慮をにじませる。

 もう一つの県被団協の大越和郎理事長代行(74)は「核兵器保有国にすり寄る行為。被爆地選出の外相がいながら情けない」と非難する。「残念ながらいつもの二枚舌外交」とは、NPO法人ひろしまジン大学の平尾順平学長(38)。「今後の安全保障の在り方をどうするか、ヒロシマに何ができるか、考えさせられる」

 広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長(核軍縮)は、過激派「イスラム国」の台頭やウクライナ問題を念頭に「欧州諸国は情勢が不安定なだけに、危機感を持って核問題に取り組んでいる」とオーストリアの取り組みを分析。「核使用は地球規模の被害を及ぼすのだから、日本にとっても対岸の火事ではない。核兵器禁止の道筋を真剣に探る時だ」と訴えた。

 市平和推進課は「外務省に詳細を確認中。長崎市と連携し、対応を検討する」としている。

(2015年2月19日朝刊掲載)

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