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交渉の糸口見えぬまま 「竹島の日」10年・あす松江で式典 地元は早期解決望む声

 日韓両国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島(トクト))をめぐり県は、条例で「竹島の日」と定めた22日、10回目の記念式典を松江市で開く。条例制定は、竹島問題に消極的だった国を動かしたが、日韓関係の冷え込む中、領土問題交渉は糸口すらつかめない。地元から早期解決を望む声が上がる。

 「4月から小学校の教科書に竹島が載る」。同市のJR松江駅前で15日、竹島問題解決を訴えた市民団体「県土・竹島を守る会」の諏訪辺泰敬会長(64)は、啓発や教育に力を入れる国の動きを歓迎する。

 条例は、国が問題解決の姿勢を示さない中、竹島の県土編入100年を機に議員提案され2005年3月に施行した。翌年から2月22日に同市で式典を開いている。諏訪辺会長は「条例は風化しそうだった竹島問題をよみがえらせ、国を動かした」と振り返る。

 国の姿勢は、12年8月の韓国大統領の竹島上陸後に大きく変わった。問題解決に向け同月、韓国に国際司法裁判所への共同提訴を提案。13年2月には内閣府に領土・主権対策企画調整室を設置した。式典には13年から毎回、政務官を派遣。文部科学省は昨年、竹島を「わが国固有の領土」と明記した中学高校の教科書作成の指針を示した。

 だが、国内の動きと裏腹に肝心の領土交渉はテーブルにすら着けない状態が続く。日韓首脳会談も2年以上開かれず、改善の兆しはない。自民党が12年の衆院選の政権公約に記した国主催の竹島式典開催は、韓国への配慮から見送られたままだ。父と兄、叔父が1954年まで竹島周辺で漁をした島根県隠岐の島町の漁業八幡昭三(しょうざ)さん(86)は「生きているうちに解決するのか」と不安を募らせる。

 溝口善兵衛知事も「現状に満足はしていない」と言う。県議会竹島領土権確立議員連盟の原成充会長(69)は「領土問題は国の専権事項で地方は手が出せない。県としては現状の取り組みを続けるしかない」。

 韓国による実効支配前の竹島での漁の様子を描いた絵本「メチのいた島」の作者で同町の元小学校教諭杉原由美子さん(71)は言う。「竹島の日は希望。漁の再開につなげてほしい」(川井直哉)

竹島
 島根県・隠岐諸島の北西約158キロに位置し、東西二つの島と岩礁から成る。総面積は0・21平方キロ。韓国が1954年から警備隊を常駐させ、灯台やヘリポートを建設するなど実効支配を続けている。

(2015年2月21日朝刊掲載)

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