×

ニュース

海隔て 課題山積 伊方再稼働 審査大詰め 30キロ圏の上関町八島

 原子力規制委員会による適合性審査が大詰めを迎えた伊方原発3号機(愛媛県伊方町)。事故時には、県境を越えて中国地方にも影響が出る恐れがある。山口県上関町の一部は30キロ圏に入るが、避難対策などに課題が残る。瀬戸内海の汚染を懸念する声もある。広域での備えが求められる。(井上龍太郎、山瀬隆弘)

 山口県上関町の室津港から1日3往復の定期船で約30分の離島、八島。山の斜面に民家が張り付く。「原発は山の裏の海の向こう。危険なんて実感はない」。定期船の切符販売を担う久保泰子さん(76)は待合所で静かに語った。四国電力が同原発の再稼働を目指す中、再稼働に備える慌ただしさは島に見られない。

 面積4・2平方キロに27人が暮らす。中国地方では伊方原発に最も近い。島の一部が約30キロの距離にあり、全島が緊急防護措置区域(UPZ)に設定された。山口県は2013年、放射線監視装置(モニタリングポスト)を島に設けた。

 海を隔てて原発事故が起きたらどうするか―。島に課題は山積している。一つは超高齢化だ。島民27人のうち26人が65歳を超える。1人暮らしの今西幸子さん(84)は「福島の事故で再稼働に不安はある。でも自分の体のことでいっぱい」。痛めた腰をさすりながら語った。13年、島で初めての原子力防災訓練があった。多くの人がつえや手押し車を使って避難先に集まり、介助の必要な人もいた。

 島から本土への避難手段も万全ではない。上関町は13年、住民が船で避難する行動計画をまとめた。定期船のほか漁船の利用を想定する。八島区長の大田勝さん(76)は「再稼働に反対はしないが、しけだと船は出せない。お年寄りばかりで安全に逃げられる保証はない」と訴える。

 山口、広島県は昨年初めて、四国4県などと連携の会議を開いた。四国電は山口県や上関町への対応について「愛媛県を通じて求められれば説明する」とする。広域連携の取り組みは緒に就いたばかりだ。

伊方原発
 瀬戸内海に面した愛媛県伊方町に立地。事故を起こした福島第1原発とは違う加圧水型軽水炉(PWR)で、全3基ある。合計出力は202万2千キロワットで四国電力の全発電設備の3割を占める。1号機は1977年、2号機は82年、3号機は94年に運転を始めた。2012年1月から全機が停止している。

(2015年2月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ