×

ニュース

被爆神父 アルペさん知って 伝記や漫画 日本語版に

■記者 増田咲子

 被爆直後の広島で負傷者を救護し、イエズス会総長を務めたペドロ・アルペ神父(1907~91年)の歩みを若い世代に広めようと、日本語訳の伝記や漫画を広島の関係者が相次いで刊行した。神父をカトリックの福者(ふくしゃ)にする運動を続けている信者らが協力した。

 スペイン出身のアルペ神父は、安佐南区にある長束修練院の院長だった1945年8月6日、被爆で傷つき逃げてきた人々を医学の心得を生かして手当てした。日本管区長を経て65年から83年まで総長を務め、イタリア・ローマで死去した。

 「ペドロ・アルぺSJ伝」を翻訳したのは、ノートルダム清心中・高(広島市西区)の化学教諭、緒形隆之さん(57)。「自らも原爆に遭い、日本人に寄り添った外国人神父の存在を広く知ってもらいたい」と、英国で出版された伝記を1年がかりで翻訳し、B5判、286ページにまとめた。信者でつくる「アルペ神父の列福を祈る会」が監修した。

 生前の神父を知る祇園カトリック教会(安佐南区)のホアン・カトレット助任司祭(74)は、スペイン語版の「漫画アルぺ神父」を翻訳し、自らも「こどもの友 アルぺ神父の生涯」を執筆した。いずれも48ページ。「若い人たちに読んでもらいたい。広島の恩人である神父に福者になってほしい」と願っている。

 3冊とも問い合わせは、同教会Tel082(874)5198。

福者  カトリック信者の尊敬を集めて模範となった故人に与えられる、聖人に次ぐ称号。マザー・テレサも福者の一人。日本では2008年に長崎市で初めて列福式が開かれ、江戸時代の殉教者188人が福者になった。

(2011年4月28日朝刊掲載)

年別アーカイブ