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『フクシマとヒロシマ』 広島大原爆放射線医科学研究所 細井義夫教授に聞く

■記者 河野揚

 東日本大震災から11日で2カ月がたった。福島第1原発事故を受け、福島県立医科大(福島市)の医療チームに参加している広島大原爆放射線医科学研究所(広島市南区)の細井義夫教授(51)に現地の医療体制や住民らが注意するべき点について聞いた。

校庭での被曝懸念

 ―現在の支援状況は。
 転換期に来たと考えている。原子炉の状態がかなり落ち着き、放射線の空間線量率が徐々に低くなってきた。急性期が終わり、安定期との中間あたりの段階だ。福島県立医科大は当面、緊急被曝(ひばく)医療の態勢を維持するだろう。これからは30キロ圏内で作業した警察官や消防隊員、一時帰宅をした住民に対する診察に取り組むことになる。

 ―広島大はどのような役割を担っていますか。
 3次被曝医療機関として今月上旬まで、医師2人を含んだ6人を常時派遣してきた。飯舘村では住民の甲状腺調査などもした。

 当面医師1人、診療放射線技師1人、事務員1人の3人の派遣を続ける。付属病院を拠点にして、放射線量の評価などでも協力する。広島には長年蓄積してきた放射線の知識や経験がある。住民の健康影響、心理的な不安感に対して適切に対応したい。

 ―住民の被曝状況は。
 内部被曝は心配するほどではないと考えている。草が生えているような土壌では放射性物質があまり舞い上がっていないからだ。靴の裏にもほとんど付いていなかった。つまり粉じんなどからの放射性物質の吸引はあまり心配しなくていい。

 ただ一部の場所では放射性物質が地面にくっつき、そこからの放射線量が高い。必要なのはやはり外部被曝の対策だろう。

 ―懸念がありますか。
 一番心配なのは校庭だ。草などがなく、細かい砂ぼこりが舞い上がる恐れがある。被曝した子どもの発がん頻度が高くなるのは事実で、一番守ってあげなければならないと強く思う。必要最小限の外出に抑えてほしい。また飯舘村など線量が高い場所では、家庭菜園でとれる野菜にも注意が必要だ。

ほそい・よしお
 東北大医学部卒。同大助教授、東京大准教授、新潟大教授などを経て2010年10月に広島大原爆放射線医科学研究所放射線災害医療研究センター教授。11年4月から同大緊急被ばく医療推進センター副センター長も務める。専門は放射線医療開発。東京都出身。

(2011年5月12日朝刊掲載)

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