×

ニュース

「黒い雨」被爆手帳申請 広島市に36人 却下で集団提訴へ

 原爆投下により降った放射性降下物を含む「黒い雨」に国の援護対象区域外で遭い、健康被害を受けたとして広島市の36人が23日、市へ被爆者健康手帳の交付を申請した。24日は安芸太田町などの6人が広島県へ申請する。国に援護対象区域の拡大を迫る狙いで、県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会(高野正明会長)が主導。計42人は却下された場合、処分取り消しを求めて集団訴訟に踏み切る。

 申請者はいずれも国が指定する「第1種健康診断特例区域」(大雨地域)の外側で雨を浴びるなどした影響でがんなどを患ったと主張。被爆者援護法で「身体に原爆の放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と定める「3号被爆」に該当するとして、交付を求めている。

 この日、安佐北区、佐伯区などの被害住民や代理人が市役所の窓口を訪れ、職員に申請書類を手渡した。市によると、特例区域外で遭った黒い雨の影響を理由に、被爆者健康手帳の交付を求められた例は過去になく、結論を出す時期は見通せないという。

 黒い雨をめぐっては、特例区域内で雨に遭った人は健康診断の費用が無料となる受診者証を交付され、特定の病気を患えば、被爆者健康手帳を取得できる。一方、区域外の人には援護がない。県や市などは特例区域を現行の約6倍に広げるよう求めたが、国は2012年に見送りを判断。代わりに13年、区域外の住民向けの健康相談を始めた。

 申請者は手帳と併せて、受診者証の交付手続きもした。高野会長は「住民は真実を訴えている。国が聞こうとしない以上、もう提訴するほかない」と説明。制度上は県と市を相手取る形になる可能性が高いが「あくまで国に援護区域を拡大させるのが目的だ」と話している。

 市原爆被害対策部は「法令に基づき適正に審査するとしか言えない」としている。(田中美千子)

(2015年3月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ