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高齢化「最後の挑戦」 「黒い雨」手帳申請 被爆70年 援護拡大訴え

 原爆投下直後に降った「黒い雨」を浴びながら、国の援護を受けられていない住民たちが23日、司法判断による援護拡大を目指し、前段となる被爆者健康手帳の集団申請に踏み切った。「自分の病気は原爆のせいだと認めてほしい」。被爆70年。国に訴えを退けられてきた被害者たちが老いを深める中、最後の手段に打って出た形だ。

 23日、援護対象区域外で雨に遭った36人が、広島市原爆被害対策部の窓口に列をつくった。いずれも雨に含まれた放射性物質による健康被害を訴え、申請後の記者会見では「次から次に病気が出てくる」「ありのままを伝えても国は信じてくれない」と声を上げた。

 集団申請の参加者は広島県で手続きをする24日分を含め計42人に上る。主導した県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会は「予想以上の人数。住民の怒りが大きい証拠だ」と言う。手帳交付は却下される公算が大きく、それを受けて処分取り消しを求める訴訟を起こす。司法の場で勝訴し、援護対象区域外の住民に手帳交付が認められれば、区域拡大につながる―との戦略を描く。

 協議会は前身団体ができた1978年以降、同じ訴えを続けてきた。住民の声を背に市や県も援護対象区域の拡大を求め続け、2010年には住民調査を基に約6倍に広げるよう迫った。が、厚生労働省の有識者検討会が12年、「科学的根拠に乏しい」と結論付け、国も判断に従った。

 42人は70~90歳。多い時で約千人いた協議会の会員は亡くなったり、援護拡大を諦めたりして約600人まで減ったという。「これが最後の挑戦だ」。会見ではそんな声も出た。(田中美千子)

(2015年3月24日朝刊掲載)

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